せいれいたちの詩

こわいもの

　誰かが今鉄砲玉でしにました

　だれもとむらうものはなし

　後でまとめてするからと

　許してくれという兵の

　荒んだ心の内にある

　孤独なそれはなに

　仲間を失うたび

　増していくの

　明日知れぬ

　兵の定め

　最期の

　不安

　死

　不安

　不安が

　戦のもと

　敵を信じて

　敵じゃないと

　未来の危険など

　ないんだと信じて

　敵だって不安なのだ

　不安だから襲うのだ

　何を恐れているの

　欲望嫉妬という

　人間の欠落点

　人は愚かだ

　そのせいだよ

　戦はなくならぬ

　守るためだけの戦

　不安に怯えている者

　きっと相手を信じれば

　戦わなくて済むんだろう

　守るために殺し合う人びと

　一たび殺せば止まらない

　どっちも必死なだけだ

　相手の不安を信じて

　欲望を否定して。

　戦争は不安から

　産まれ落ちる

　悲劇の寵児

　止めてあげて

　悲しみの道

　断ち切れ

　悲劇を

　こわいもの

　イクサのせいれい