第90話 帰ってきて
「騎士団に後始末を任せたわけだが、姫様は戻るのか?」
俺達は突入したアジトを後にし、自分達のアジトに戻ってきていた。
シーダが後始末をしてくれると言うので、任せてきたのだ。
そこで、留守番していたフィアとルリーの元に戻ってきて質問したと言うわけなんだが。
「そうね。裏から隠れて戻るわ」
「それも、シーダが戻ってきてからだろう?」
「えぇ。その方がいいかしらね」
フィアはシーダと共に戻るらしい。
問題は……。
「ガイさんはどうするんです?」
顔を向けると眉間に皺を寄せていた。
迷っているのだろう。
「そうだなぁ。ルリーは、どうしたい?」
そうか。
ルリーの要望を聞いた方がいいよな。
大分アリーに懐いたみたいだけど……。
「あたいは……父ちゃんが居ればいいよ。うん……でも、出来ればアリーちゃんと一緒に居たいけど……でも、それはワガママだから」
ルリーはガイさんとアリーと居たいと。
それならば、答えは決まってるじゃないか。
「そうか! そう言ってくれるなら、皆で帰ろう!」
「えっ? ルーイ村に?」
「……ルリーの故郷はルーイ村だもんな。父ちゃんな、ベルンっていう街に居たんだ。母ちゃんも、アリーも居るぞ。もちろん、テツもな」
「母ちゃんもいるのぉー? じゃあ、行く!」
ルリーは快く行くと言った。
その返答にガイさんはニッコリと笑い。
「皆で、ベルンへ帰ろう! 楽しみだな!」
「うん! あたいも楽しみ!」
ベルンへ思いを馳せていると、シーダがやってきた。
「後始末は終わったぞ。どうした? 何かあったのか?」
「いや、何でもないさ。ただ、ガイさんとルリーのベルン行きが決まっただけだ」
「おぉ。行く事にしたか。まぁ、そうなるわな」
シーダも結論に納得したようだ。
「じゃあ、俺達も戻りますか! ソフィア姫」
「そうね。テツさん、ガイさん、アリーさん、そして暁の皆さん、この国を救ってくださってありがとうございました。そして、私を救って下さり、感謝しています。何か今後できることがあったら何でも仰ってください」
仰々しく礼をするソフィア姫。
あんまりかしこまられるとこちらとしてもむず痒いのだが。
「まぁ、したくてやった事だからな。結果的にガイさんにも会えたし家族も増えたから、良いことずくめだったと、そう思う」
ガイさん、ルリーを見ながら今の思いを吐露する。
アリーを見ると涙ぐんでいた。
「私は、お父さんが生きていてよかった。会えたのも、フィアとルリーを救ったおかげ。さっきのは悲しい出来事だったけど、新しい家族……ルリーを迎え入れようと思う。私は前を向く!」
アリーも思いのたけをぶつける。
なんだか、胸の内を晒す会みたいになってしまった。
「皆さん、お元気で。そして、また会いたいです」
スフィア姫の笑顔の目にも涙が溜まっていた。
短い間だったけど、凄く濃い時間を過ごした気がする。
また、会いたいよな。
俺は、心が温かくなった。
救った人達が誰かの大切な人達で、救ってよかった。
その内の一人は身内だったわけだけど。
あの時の俺達の行動に間違いはなかったと、改めて思う。
帰りは少し違うルートで行こうか。
あの街を経由すると面倒事になりそうだ。
無視して違うルートを通って行こう。
帰るルートまでガイさんと話し合った。
賑やかな時間はあっという間に過ぎ去り。
ソフィア姫と騎士団の面々とはお別れだ。
「テツ、またな。今度こそ勝つからな!」
「俺は、まだまだ精進しなければならない。シーダには負けるつもりは無い」
俺は、敵対心を剥き出しにして返答する。
それには苦笑いで返すシーダ。
「バイバーイ!」
「あぁ、じゃあ、また!」
「また会いましょう!」
ルリーの元気なお別れの言葉に、シーダとソフィア姫が手を振りながら答えてくれた。
見えなくなるまで手を振り。
朝日の中を出発した。
「アリー、ガイさん見つかってよかったな?」
「はい! でも、やっぱりテツさんのおかげでしたね? テツさんがいれば何でも解決できますね!」
「そんな事ない。みんなが居てくれたからだ。帰るまでもうひと踏ん張り頑張ろう」
俺が皆に言葉をかけるとコクリと頷いてくれた。
道のりは何事も問題なく。
無事に俺達はベルンに着いた。
「もうすぐ着くぞ!」
「おぉ。ベルンだ。変わってない……」
ガイさんは懐かしむように街並みを見つめる。
ジンさん、サナさん、ミリーさん、みんな喜ぶだろうな。
「ここが父ちゃんとアリーちゃんがいた街なんだね?」
ルリーは初めて見る街に目をキラキラさせている。これからの生活も思い浮かべて居るのだろうか。
「お母さん、元気ですかね?」
「何となく、ミリーさんは大丈夫じゃないか? ジンさんもサナさんもいるし」
「そうですね!」
アリーが笑顔をこちらに向ける。
今回の旅で更に大人になった気がする。
魅力が増した。
「俺達は強くなったっすかね?」
「少しは強くなったと思いたいですね」
「……強く……なった?」
暁の三人がこの旅の成果を実感?している。
実際、生き残るという意味ではスキルが上がったんじゃないだろうか。
強敵も相手にしたし。
自分の課題もクリアしたり。
実りのある遠征だったんじゃないだろうか。
「「「ただいまぁー!」」」
ギルドに行くと何やら騒がしい。
人が集まっていた。
「おう! テツじゃねぇか! あっ、ガイもいたか。大変なんだよ! 聖ドルフ国がよ、侵略されてるってんだ!」
感動の再会もままならないうちに、再び騒動に巻き込まれる。
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