第88話 情報収集
「まずは、前の頭領の情報が何処で得られたか聞くぞ」
ガイさんが宣言する。
主要人物を集めた会議が、ある建物の中で開かれていた。
皆一様に真剣な面持ちである。
「まずはそれからだな」
「じゃあ、その得られた場所から重点的にあらうんだな?」
「そこは人海戦術だろう。みんなで聞き込みをしよう」
大地の剣の面々がそれぞれ意見を言う。
しかし……。
「いや、ダメだ。大々的に動くと奴に伝わる可能性がある。なるべく静かに動くぞ」
ガイさんが仲間に指示を出す。
コクリと頷いた。
◇◆◇
「で、これからどうします?」
俺は渋い顔をしているガイさんに問いかけた。
何でこんな顔をしているかというと。
ガイさんが前の頭領に聞いたら、目撃情報は王都だったらしい。
そして、何らかの組織を作って暗躍しているとか。
そこに情報屋が居るらしい。
だったら話は早いんじゃないかと思ったが、そうもいかなかった。
接触したことはした。
ただ、あっちも危険を伴うからって一千万バル払えと言われたんだ。
すぐに払えるわけもなく。
一旦帰って来て、金をかき集めたのだ。
そして、今日会って情報を買おうとしたらそいつは死体でみつかった。
手掛かりが無くなったわけだ。
こうなってしまっては、次どうするか。
下手に動くと死人を増やしかねない。
「あぁ。どうするかなぁ……」
今はガイさんと二人だ。
大人数で動くと目立つ。
ガイさんの顔も見られない方がいい。
その為、ローブを目深に被って二人で移動している。
他のみんなはアジトで待機してる。
「あまり出しゃばるのも良くないと思って言わなかったんですけど、俺に任せてみませんか?」
「テツに?」
「はい。まだ話していませんでしたが、俺には前世の記憶があります」
「ぜん……せ?」
「あっ、えーっと……この世界に生を受ける前の世界のことを覚えてるんです」
「ほぉ。そんな事があるのか」
「はい。で、実は殺し屋だったんですよ……前世」
「おぉ。で? 何が言いたい?」
「驚かないんですか?」
ガイさんが驚かないことにこっちが驚いてしまった。
当然のように受け入れてる。
「テツを見ればわかる。その目、動き、空気。只者じゃないのはわかってた。だから、殺し屋だったと言われて納得した」
「そうですか」
なんだか拍子抜けしてしまった。
そんなにあっさり受け入れられるとは良いのやら、悪いのやら。
「俺なら、闇に紛れられます。潜入は得意です」
「場所がわからないのにか?」
「見つけ出してみせましょう」
「頼もしいな。流石は俺の息子だ」
頭が真っ白になった。
口を開けてボーッとしてしまった。
「何そんな顔してんだ? あぁ。息子って言ったからか? ありゃ、テツがアリーと添い遂げるって言うからだな! だったら、俺の息子ってことだろ!? わざわざ言わせんなよ! 恥ずかしいだろ!」
そうか。
この世界で俺は親を得たんだ。
アリーのおかげで。
前世で親無しの俺は。
ようやく今世で親を得たんだな。
この人が親なんて最高だ。
「必ず、見つけてみせます」
「頼んだ。無理はするなよ?」
「はい!」
そこで別れた。
奴らには嗅ぎ回っているやつがいる、くらいの情報がいっているのだろうか。
誰が情報屋にアジトの場所を聞いたかなんて特定はできてないだろう。
それを知りたくなるんじゃないのか?
前に情報屋と接触した建物の周辺を見張ってみるか。
その晩から闇夜の監視が始まった。
一日、二日と過ぎ。
三日目の深夜。
「なんで殺す前に聞かなかったんだ?」
「話すわけないだろ? 情報屋なんかやってんだからよぉ」
「そっか。それでボスが?」
「あぁ。誰と接触したかをつきとめろってさ」
「なんか残ってるのか?」
「知らねぇよ」
二人は会話をしながら小屋を漁っている。
俺達も最初はなにか情報がないか探した。
けど、何も無かったのだ。
「ここには何もねぇ。どっかに隠してる部屋とか棚とかがあるかと思ったが、無さそうだな」
「片付いてて綺麗なもんだったな」
「戻るか」
二人は歩いてどこかへと向かう。
闇を体に纏ってついて行く。
これで見つかりにくいだろう。
「なぁ、今はわざわざグルグル回ってアジトに入らなくて良いよな?」
「誰もいねぇからな。いいんじゃねぇか?」
人がいる時は後ろの人を撒くような歩き方をしてアジトに入るようにしているという事か。
そりゃ、見つからないわけだ。
ただ、今は真っ直ぐアジトに向かっているようだ。
ラッキーだ。
これで場所がわかるぞ。
王都のど真ん中の廃れた小屋に入っていく。
隙間から見ると、何やら中の本棚を漁っている。
違う。
本を少し出して奥に手を入れている。
何かあるのか?
ギィィィィ
本棚が扉のように開き、奥に進めるようだ。
こんなギミックがあったなんて。
後をつけててよかった。
作戦成功だ。
「───誰かいるのか?」
急に呼びかけられた。
俺は気配は消していたはず。
気づかれないはずだ。
戻ろうとしたがその場で止まる。
闇を纏っている俺は見えないはずだ。
「つけられてたか!?」
「……いや……気のせいだったかもしれない」
コチラをジッと見ながら中に入っていく二人。
本棚はバタンッと閉じた。
その小屋を離れて遠くの路地裏に入る。
「フゥ……フゥ……フゥ……」
息を吐いて落ち着く。
気付かれたかと思った。
危なかった。
なんとか入れるところを見つけた。
後は、ガイさんに教えるだけだ。
闇夜に紛れてアジトに戻った。
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