第62話 聖都に帰還

「コイツら何だったんでしょうか!?」


 騎士団長は何者かを勘づいていなかったようだ。気付いていたのは俺とヒロ位だろうか。


「コイツらは殺し屋ですよ」


「えっ!? なんで殺し屋が私達を狙うんです!? 騎士団ですぞ!?」


「それは、誰かに依頼されたからとしか分からないですね」


「そんな……一体誰が……」


 殺し屋に嗅ぎ付けられたとなると、急いだ方がいいな。

 恐らく高価な魔道具は奴らには持たせないはずだ。売られるからな。

 伝令が走っているはず。伝令より早く着く必要がある。

 最低でも同時には着かないと王女が危ない。


「ヒロ、騎士団長、ここからは全力で向かいましょう。俺達があの街に来た事は伝令が走ってるはず」


「それだと、もう魔道具で知らせてるのでは!?」


「奴らには持たせられないはずです。奴らは金になるなら何でもするんです。道具を売るなんて一番初めに思いつきますよ。後で壊れたことにすればいい」


「なるほど。じゃあ、急ぎましょう!」


 全員で走り出した。

 レイとアケミも出発してからここまでで大分体力はついている。

 走っても問題なくついてこられる。


 それからは、夜通し走った。

 走って二日間が過ぎた頃、聖都が見えてきた。


「もうすぐだ! 騎士団長は報告を頼みます! 俺達は薬を作らってもらいます!」


「分かりましたぞ!」


 騎士団は直行で城に。

 俺達は血を持って薬屋に行く。


 薬を作って貰い、直ぐに城に向かった。

 門番には顔パスで通してもらい。

 城の中に進む。


 王女様の部屋に向かう。

 部屋の中に入り、薬を飲ませる。

 口を開き、薬を流し込んでいく。


「ふぅ。これで大丈夫だね」


「あぁ。だが、まだ油断はできないぞ?」


「敵はなりふり構わないと恐いからな」


「……ンッ」


 王女様が目を覚ました。


「あっ! マリア王女! 大丈夫ですか!?」


「ヒロ様! 私は……」


「何者かに毒を盛られて不治の病と言われ、ずっと寝たままになっていたのです」


「ヒロ様が助けてくださったのね?」


 目がウットリして二人の顔が近づいていく。


「う……うんっ! そういうのは後にしろ」


 俺が言うと恥ずかしそうにヒロが頬をかく。

 王女様は俺が誰か分かっていないため不思議そうだ。


「ヒロ様? この方は……」


「あっ。僕の親友でテツって言うんです。この世界に転生してたみたいで。たまたま会って、テツも訳あって魔王の討伐に参加したんです」


「えっ!? 魔王を討伐されたんですか?」


「えぇ。魔王の血が薬に必要だったので」


 突然頭を下げた王女様。


「誠に有難う御座いました。ヒロ様、テツ様お礼は必ず致します」


「いや、いい。俺も必要だったのだ。大切な人が目を覚まさなくてな」


「そちらに行かなくて大丈夫なのですか!?」


「あぁ。王女様が無事に終わったら行くぞ」


「それはどういう────」


「王女様! 目が覚めたのですか!? これはこれは……」


 ズカズカとゲーハ大臣とその部下が入ってくる。すると俺達の間に立つように配置された。


「やれ」


「王女様!」


 王女様にナイフを刺す光景がスローモーションになる。

 俺の中で使えていなかったはずのパワーが蠢いた。そして、やるべき事を伝えてくれる。


「絶対防御!」


 ガギンッと王女様の手前でナイフが止まった。

 そういう事か。

 俺の中で燻っていた力はこれだったのか。


「テツ……もしかして」


「はっ。俺も勇者の称号を得たようだ」


 魔王を倒したことにより称号を得たのだろう。

 それにより、後天的に固有能力に目覚めたと。

 絶対切断より使い勝手良さそうだな。


「固有能力か!? クソガキがぁぁぁ!」


「ゲーハ大臣!? 何をしてるんだ!?」


 その時、タイミングよく騎士団長が駆けつけてくれた。

 流石だ。頼りになる。


「はっ! 騎士団長! こやつらが王女を!」


 俺達を指さして俺達が王女を害そうとしたと言いたいらしい。

 俺達は肩を竦めて騎士団長を見る。


「そんな訳が無かろうが! 不敬罪だ! 捕らえろ!」


「「「はっ!」」」


 騎士団が押しかけてきて男達を取り押さえていく。たまに抵抗する奴がいたが、俺達は魔王を倒す旅に行っていたんだぞ。

 そこらの兵士などには負けるわけが無い。


 抵抗しても即座に無効化して行く。

 少し荒くではあるが。

 頭をぶん殴って気絶させている。


 その後、王が入ってきた。

 目に涙を滲ませている。

 王女様が目が覚めて嬉しいのだろう。


「マリア……よかった……」


「お父様、ヒロ様とテツ様のおかげです」


「それだけじゃないぞ? 勇者様皆だ。ショウ殿、アケミ殿、レイ殿、そして騎士団の者達。みんなマリアの為に命を懸けてくれた。そして、今も、マリアの命を救ってくれたんだ」


「本当に、有難う御座います」


 王様と王女様二人から深々と礼をされるとこちらもむず痒い。


「いや、こうなって良かったですよ。大臣も排除できたみたいですし」


「ハッハッハッ! そうなのだ! 最高の終わりだったよ!」


 大笑いしている王様の後ろから王妃様がやって来た。


「あなた? あなたの選んだ大臣がやらかしたのよ? あなたの責任でもあります!」


「げ、厳密にはそうかもしれないがな……仕方がないという部分もあってだな」


「あなた、しばらくデザート抜きですわ」


「……はぁ……仕方がないか……」


「「ぷっははは」」


 俺達は思わず笑ってしまった。

 罰がデザート抜きとは可愛すぎる罰である。


 こうして聖都での騒動は終わったのであった。


「ヒロさんは魔王討伐が終わったんですから、ずっと私といれますよね?」


 王女の発言から再び波乱が?

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