第59話 魔王山の麓
各所で補給しながら順調に旅をしてようやく目的地に着いたのであった。
「ようやく来たね」
「結構かかったな。ここなのか?」
「ここが魔王山ですぞ!」
目の前には頂上までかなりの高さがある山が。
富士山くらいだろうか。
ここにはSランクしか棲息していないらしい。
「行こう!」
ヒロが先陣を切って進んでいく。
未知のSランクが居るに違いない。
そして、待ち受ける魔物の王とはどんな魔物なのか。
この山はそれぞれの縄張りを守って生活しているようだ。
Sランク同士だと力が拮抗しているために、そのようになったのだろう。
最初に出会ったのはキマイラと呼ばれる魔物が混じりあったような魔物であった。
「コイツは魔物が混じりあってます! その為に死角がありません! 私達が盾になります!」
重装備の鎧を着ているため盾になれるだろうが、そこまでしなくてもいいと思う。
闇を射出する。
ボッという音と共に前足が吹き飛ぶ。
前に訓練所であみだした闇の弾を打ち出したのだ。効果はあるようだ。
「絶対切断!」
スパッと反対側の前足も切り落とす。
そこにショウが攻撃をする。
「オラオラオラオラァ!」
顔面へ拳を固くしてしなやかな筋肉で連撃を繰り出す。
勢いに負けて顔を仰け反る。
首が露わになった所の下にヒロが潜り込む。
そして、剣を叩き込む。
「絶対切断」
ズバンッと首をはねる。
断末魔をあげる暇もなく倒れ伏した。
「流石です! ヒロ殿! 首に当たれば一撃ですね!」
「まぁ、当てるのが難しいんだがな」
騎士団長の言葉に思わず辛辣な言葉を発してしまった。
この能力は使い勝手が悪いだろう。
何でもかんでも切れる。
その為、能力を小出しにしないと使えない。
ヒロはこの能力に振り回されていた。
能力が強すぎて使いこなせていない。
「テツは……分かるよね……ボクが使いこなせてないの……」
「あぁ。振り回されてるな。鍛錬が足りない」
「そうなんだよね。この能力恐くてあんまり使ってなくてさ」
「そういうのは……」
「「使うより慣れろ」」
二人の言葉が重なる。
二人で目を合わせる。
「だよね?」
「分かってんならやればいいだろ?」
ヒロは分かっていて実践してなかったようで、俺も苦言を言わざるを得ない。
けど、実践できなかったのもわかる気はする。
使うほど強い相手がいなかったのだろう。
弱い敵は能力を使わなくても倒せてしまうから。敢えて使ってもいいのだが、それはそれで能力がないと何も出来ない奴になってしまう。
難しいところだ。
そう思ってヒロも能力を温存しておいたのであろうが、それが裏目に出て使いこなせていないのだ。
「んー……ここでならいいかも。ドンドン使っていくよ!」
「そうだな。ここで慣れろ。強い魔物には事欠かないだろう」
「よしっ!」
騎士団より前に出て先行する。
「ヒロ殿! 危険ですよ!?」
「危険は承知です! 前に出ないと強くなれないです!」
すると、ショウまで前に出てきた。
そうなると騎士団のいる意味が無いのだが。
まぁ、案内役としてはこんな所なのだろう。
「おっしゃ! 俺もやるぜ!」
シャドウボクシングをしながら進んでいく。
ヒロにとっては心強い事であった。
向かう先に巨大な亀がわらわれた。
ガラパゴスゾウガメの巨大バージョンか。
ズズゥンと地面を揺らしてくる。
俺は足止めの為に闇の弾を足に打った。
ボッと言う音と共に前足が無くなる。
さっきと同じパターンに見えたが。
亀は甲羅の中に首を引っ込んでしまい対処のしようがない。
だが、ここでヒロの出番だった。
「ヒロ、甲羅ごと切れないか?」
「あぁ! 切れるかもね」
剣を構えて亀に近づく。
剣を振りかぶり、勢いよく振り下ろした。
「絶対切断!」
ズバンッ
亀の甲羅を中身ごと真っ二つにした。
勢いをつけたせいだろうか。
その先の木々も伐採されている。
「あぁ。なんであっちまで切れちゃったの?」
「ヒロが振りかぶったからじゃないか?」
「軽くでいいのかぁ……」
使い方が難しいが、これは慣れるしかない。
「では、また先頭は騎士団が務めますよ!?」
騎士団長が先頭にたち再び歩みを進める。
もう少しで暗くなりそうだ。
何処かで野営をした方が良いだろう。
「野営する場所を探した方がいい」
「そうですな!」
キョロキョロ見ながら進んでいく。
洞窟のような穴が空いていた。
ここがいいかなと近づくと。
「シャーーーー」
中からデカい大蛇が出てきた。
みるみる間に俺達をシッポで巻いて行く。
「ヒロ、出番」
ヒロに切断してもらおうとする。
しかし、ヒロの位置が悪い。
俺達の中に位置していた。
「ボクがここで使ったら皆も切断しちゃう!」
ギリギリと締め付けられる中、どうしたものかと考えていた。
ここで俺が倒してしまうことも出来るが。
ヒロがやる事に意味がある気がした。
「ヒロ、切断する物を選択するんだ。出来ないか? 切りたくないものは切らない」
「えぇ!? やった事ない……」
「お前ならできる」
「……やってみるよ」
ヒロの顔が覚悟が決まった顔であった。
ブツブツと呟き始めた。
「大蛇だけ切る……仲間は切らない……大蛇だけ切る……仲間は切らない」
俺は、ヒロを信じる。
これが出来れば使いこなせたも同然だ。
ゆっくりと締めあげられながら、手首だけで剣を動かしている。
「絶対……切断!」
スパーンッと大蛇だけが見事に切れた。
他には切れていない。
ボトボトと輪切りにされた大蛇の亡骸が落ちる。
「できたな」
「はぁぁぁ……緊張した……」
「流石です! ヒロ殿!」
騎士団長はご満悦である。
賭けに近かったが、何とか使えそうだな。
野営にもってこいの洞窟で蛇の肉を食らって休むのであった。
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