第54話 夜襲
「スー…………スー」
夜中。
見張りは寝てしまっている。
辺りには甘い香の匂いが漂っていた。
「お前ら、片っ端から縛っていけ」
暗闇でコクリと頷く男達。
騎士達の手を次々と縛っていく。
ヒロは寝たフリをしていつ起きようか伺っている。俺はというと。
「おい! 料理作ってたやつどこいった?」
ズシュッ ドサッ
「ん? どうした!? 何があった!?」
「ボク達には効かないよ」
「なに!? ぐわぁぁ!」
その男は胸から剣先を生やしたまま絶命した。
周りの男達も暗闇の中だが、声で異変を感じ始めていた。
「なんだ?」
「何が起きてる?」
「おい! なにがぁぁぁ!」
一人、また一人と倒れていく男達。
俺とヒロにはこういう状態異常系は効かない。
前世での出来事が思い出される。
睡眠薬を少量盛られて眠ったら銃で撃つというのだ。あの時は眠らないように必死だった。
いつの間にか眠気がなくなり、耐性が付いたんだったか。
あれは組織立ってやっていた事だから、俺だけがやっていたことでも無い。
だからヒロも耐性があるんだが。
この場にいた全員が倒れた頃。
俺とヒロのみ立っていた。
「テツ、隠れてたの?」
「あぁ。闇を纏ってたんだ。夜はそれだけで見えなくなる」
「あぁ! なるほどね! 便利だね。暗殺者っぽいね?」
そうなのだ。
夜のスタイルが暗殺者と変わらないスタイルになってしまっている。
まぁ、脅威を排除できるならなんでもいいが。
「こっちでも前世と似たようなスタイルになるなんて、皮肉なもんだな」
「まぁ、この世界では強いことは生きていくために必要だよ? 強くないとアリーさんやられちゃうよ?」
「やらせない」
「その為には、強くないとでしょ?」
「あぁ。矛盾してるな。けど、アリーは必ず守る」
ヒロがニコニコとしている。
なぜかその笑顔がバカにされているようで腹がたってきた。
「そうだねぇ。まぁ、そのまま上を目指していけばいいと思うよ? 今のままで良いとは思ってないでしょ?」
「あぁ。そうだな……ところで、これはどうすればいいんだ?」
「盗賊だろうからね……取れるものとって埋めようか」
盗賊の武器やら何やらをとって後は土に埋める。金目の物は持っていない。
何処かに置いているのだろう。
拠点がどこかにあるのだろうな。
まぁ、そろそろ後を追ってもいいか。
「ヒロ、留守番頼む」
「えっ!? どこ行くの?」
「一人生かしてたんだ」
「ワザとだね?」
「あぁ。拠点が分からない敵は帰るところを狙う。基本だろ?」
そう言うと闇を纏い、走る。
闇を纏っている為、身体能力も強化されている。一人泳がしていた賊の後を追う。
少し足を切り付けていた為、移動速度は遅くなっており、すぐに見つかった。
片足を引きづりながら拠点に戻っていく姿を眺めながら、後ろからゆっくりとついて行く。
「大変だ! 返り討ちにあった!」
しばらく行った先にあった洞窟の中に入ると騒ぎ出した。
「眠りの香はしっかり焚いたんだろうな?」
奥からやってきたのはスキンヘッドの大きい男であった。
「へい! お頭! 焚いたんですが、効いていない奴らが居たようです。それで、返り討ちに……」
「そうか。じゃあ、本隊で出る─────」
ズバンッとお頭の首が飛ぶ。
「はっ!?」
話していた男も胸から血を流す。
これを見た他の盗賊達はパニックに陥った。
「なんだ!?」
「何が起きてる!?」
「逃げろ逃げろ!」
入口から洞窟を歩いていき、ゆっくりと一人一人始末していく。
奥に辿り着く頃には生きているものはいなかった。
盗賊達は生かしておいても百害あって一利なし。悪さしかしないこんな奴らは生かしておく価値などない。
奥には金や武器などが散乱している部屋があり、そこから持てるものは全て持っていくことにした。使えるものは使おう。
背負い袋に金を入れ、両手に武器を持って、来た道をもどる。
野営地に戻るとヒロが丁度盗賊達を全て埋め終わったところだった。
「あっ、テツ、時間かかったね?」
「あぁ。意外と数が多かったんだ」
「そんなにいっぱい抱えてどうしたの?」
「戦利品だ。皆で使えるものは使う。金もあったから取ってきた」
「まぁ、あっても困らないからね」
ヒロが剣を物色し始めた。
時折「おぉ!」とか「これは……」とかいい武器が混じっていたのだろうか。
二本ほど剣を自分の荷物の所に置いている。
「他は起きないか?」
「結構あの匂いキツかったじゃない? 下手したら朝まで目は覚めないかもよ?」
「そうか……目が覚めたてしまったな。このまま見張りするか」
「そうだね」
朝日が昇るまであと1時間ほどだ。
それまではヒロと雑談しながら皆が目覚めるのを待つか。
騎士団と勇者組の縄は既にヒロが切ってあげている。
見張りがいても今回みたいに眠りの香等を使われると寝てしまって意味がなくってしまうということが学習できた。
次から見張りする奴には口元を布で覆うように言っておくか。
そうすれば体に回るのを遅らせてくれるだろうし、異変に気づける時間が稼げるかもしれない。
騎士団とは状態異常系の耐性をつけるような事はしないのだろうか。
耐性はあった方がいいと思うのだが。
ヒロに聞いたところ状態異常系にかかってしまった時は魔法で治すらしい。
そして、魔法で予防もできるらしい。
魔法、便利だな。
今度の野営の時に騎士団が見張りの時はそれとなく言っておこう。
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