第48話 聖ドルフ国までの道のり

「ボクが先頭で行くよ。後ろはテツが宜しくね」


「あぁ。わかった」


 ヒロの指示に従い後ろに行く。

 アケミとレイをカバーする形だ。


 道のりとしては、直線にSランクのいる領域を抜けると万が一怪我があるといけない。ということで、少し遠回りだが二層をグルっと回っていくことにしたのであった。


「ボクが始末できるのはするから、後ろに撃ち漏らしたのが行ったら宜しくね」


「俺にも戦わせろよな」


 ショウが不満の声を漏らす。


「しょうがないなぁ。じゃあ、交代にしようか」


「よっしゃ!」


 呆れた様にヒロが言うと喜ぶショウ。

 アイツは子供みたいな奴だな。

 戦いが楽しくて仕方がないといった感情が表に出ている。


「アケミ達はついて行くだけって感じだねー」


「そのようですわね」


 アケミとレイは戦えない事をラッキーと思っている。まぁ、戦わないのが何だかんだで一番いい事なのだ。


 相変わらず森の魔物達は強くなるという影響を受けたままだ。

 あの街、ベルンのギルドには同ランクの魔物にもパーティーで当たるようにと警告はしてきた。


 ジンさんに言っておけばしっかりと冒険者の人達にも伝わるだろう。

 サナさんもいることだし。

 あんまりまた飲みすぎてないといいんだが。


 あの人最初あった時はギルドの居酒屋スペースで酒飲んでたからなぁ。


「あっ! あのヤロー!」


「きゃっ!」


 アビットがこちらにやって来てしまったみたいだ。考え事はしていてもしっかりと警戒はしていた。


 アケミの前にサッと躍り出る。

 避けてしまうとアケミに当たってしまう。

 仕方なく上に切り払い。

 落ちてきたところをとどめを刺す。


「ショウ、しっかりと捌け」


「師匠! すまん!」


 アイツは素手の方がしょうがあっているらしい。だからなんだろうが、一撃で仕留められる事がなかなかできない。

 頭を砕けばいいんだろうが、その辺も強化されているのか中々砕けないらしい。


 ナックルを付けたらどうかと提案したことがあるのだが、ショウなりのこだわりの様だ。

 俺とかヒロは自分のこだわりというよりは如何に殺せるか。効率に重きを置くと思うんだが、こだわりというのは中々難しいものだ。


「ショウ、前にも言ったがナックル付けたらどうだ? 少し仕留められる確率があがるだろ?」


「師匠、すまん! それはできねぇ。前にも言ったけど、男は素手。これは俺のこだわりなんだ。相手にも、こう……なんつうかな敬意?を表すみたいな」


 ふむ。ショウも敬意を表すとか考えるんだな。

 しかも相手に敬意を表す?

 俺達でいう、殺すからには一瞬で息の根を止めろという教えと一緒だろうか。


 殺し屋の時に教わったのは苦しませずに殺すのが敬意を表す。みたいな意味だったと思うが。


「そうか。まぁ、自分のこだわりがあるのはいいと思う。が、時に仲間を危険に晒すかもしれない。それは肝に銘じておけ?」


「ぐっ。たしかに……ぐうの音もでねぇ」


 少しわかってくれればいいんだが、個人のこだわりとは時にチームにも影響することがある。それは、あまりいい事とは言えない。


 まぁ、方法がない訳でもない。

 要は、拳でも一撃で息の根を止めればいい。


「ショウ。目を鍛えろ。そして、確実に頭の側頭部、もしくは首に打撃を与えろ。そうすれば動けなくなる」


「動体視力か。どうすれば鍛えられるかな?」


「良く見てギリギリまで引き付けろ。ショウの拳の速さならコンマ二秒程あれば仕留められるだろう」


「なるほど。俺が遅ければ俺が怪我をするだけ」


「そう。自己責任だ。傷はレイに治してもらえ」


 そう言ってレイを見るとニコリと笑っていた。


「わたくし暇なもので、少しは怪我してくれても宜しくてよ?」


 レイはそう言うが、進んで怪我をするのも嫌なものだろう。

 ショウは戦闘狂だからあまり抵抗ないかもしれないがな。


「へっ。レイさんに治して貰えるなら怪我してもいいか! よっしゃ! かかってこーい!」


 森の中を走っていくショウ。

 本当に自分に正直な奴だな。

 嫌いじゃないが。

 

 我が強いということは自分の中での芯があると言うこと。

 悪いことではないと俺は思うがな。

 だが、それは時に周りを乱すこともある。


 あとは、扱い方次第か。

 ショウは単純だ。

 割りと分かりやすいので、扱いやすかったりする。


 レイは逆に何を考えているか分からない節がある。女性であることも相まって俺には手に余る存在だと思っている。

 なので、レイのことはヒロに任せている。


 ヒロは前世でも結婚していたということもあり、女性の気持ちが分かるらしい。

 そういう部分では俺の上をいっている。


「あらあら、元気になっちゃって。ホントに怪我してしまうわよー! 戻ってらっしゃーい! ふふふっ。全く男の子って元気ね?」


 ね?といいながらこっちを見られてもよく分からん。思わず「はぁ」とため息が出てきてしまった。


 いつもはヒロが上手く話を合わせてくれるんだが、俺は無視せざるを得ないのだ。


「もう。テッチャンってば、恥ずかしがり屋さんですのねー?」


 いつの間にか呼び方がテッチャンになっているし、言ってることが意味がわからない。

 こんなキャラだったか?

 ホントにレイとはどう接していいかわからん。


「ヒロ、俺も退屈だ。交代してくれ」


「えぇー? ったくしょうがないなぁ」


 こういう時は逃げるに限る。

 

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