第47話 旅立ち
「で、Sランクを倒してきたってかぁ」
「はい! ボク達やれました!」
ジンさんへの報告を行っていたヒロ達。
俺が見ていたから真実であることは間違いないし、ウェンリルの頭や爪など使うところは全て持って帰ってきている。
「そうか。やったな。じゃあ、いよいよか?」
「そうですね! ただ、聖ドルフ国に行ってテツの同行を許可してもらう必要があります。彼らも結構神経質でして……」
「あぁ。それは仕方ないだろう。テツ、しっかり頼むぜぇ?」
「はい。しっかり認めさせます」
俺は認めさせるとはっきり返事をする。
その返事には絶対認めさせるという覚悟が含まれていてそれが分かったのだろう。
「はっ。まぁ、お前にはいらねぇ心配だったな」
安心したのか、呆れたのか笑いながら言い放った。
「今日は休んで出発は明日にする?」
「あぁ。その方がいいだろう」
「じゃあ、明日」
その日は別れることにしたのであった。
◇◆◇
「アリー、絶対助けるからな」
眠り続けるアリーに別れを告げて部屋を出る。
部屋を出るとミリーさんが心配そうな顔をして待っていた。
「テツくん、ホントに行っちゃうのね?」
「はい。アリーを助ける為ですから」
「魔物の王の血が必要なんですもんね」
「えぇ。ミリーさんも体調には気をつけて」
「うん。アリーとフルルちゃんと待ってるわ」
「必ず魔物の王の血を持って帰ってきます」
「行ってらっしゃい」
ミリーさんと挨拶を済ませると、その後ろに隠れるようにフルルが待っていた。
「フルル、アリーを頼むな」
「任せて……必ず……帰ってきて」
「あぁ。じゃあな」
頭をポンポンとして家を出る。
フルルも不安そうな顔をしていたが、必ず戻ってくるからな。
ミリーさんもフルルがいるからまだ気が紛れるだろう。
ギルドに向かうと準備を終えたヒロ達が待っていた。大荷物を抱えている。
俺もだが、野営道具も入れているからだろう。
俺はガイさんの野営道具を使わせてもらうことにしたのだ。使い込まれていて新品のものより使いやすいとの事。
「あっ! テツ。別れは済んだ?」
「少しの別れだ。軽く済ませてきた」
「それ、フラグっていうんだよ?」
「なんだ? それは」
「まぁ、テツには関係ないか」
何やらヒロが訳のわかからないことを言っていたが、気にしないことにしよう。
「おう! 無事に帰ってこいよ?」
「はい。ミリーさんと暁の三人をお願いします」
「あぁ。任せとけ。心配すんな」
深々と礼をする。
無事に帰ってくるとは言っても万が一があるかもしれないと思うと、それも含めてのお願いしますである。
「テツ」
「はい?」
「生きる覚悟を決めていけ。死ぬ覚悟はいらねぇ」
「はい」
俺の心の中を見透かされたような気がした。
たしかに弱気になってしまっていたかもしれないな。
「テツくん、必ず帰ってきてね? じゃないと、アリーが別の男に取られるわよ!?」
すごい剣幕で詰め寄ってきた。
思わず後退りしながら、コクリと頷く。
「必ず帰ってきます」
「絶対よ!?」
「はい」
「じゃあ、行ってらっしゃい!」
バシンッと背中を叩いて後押しされる。
「行ってきます」
勇者組とギルドを後にする。
「テツ、この街良い人ばっかりだね?」
「あぁ。ホントに良い人ばかりでな。離れたくないんだよな」
「はははっ! テツらしくないじゃない? 一匹狼みたいな感じ出してるくせに」
「いや、寂しいな」
「必ず帰ってこよう。まずは聖ドルフ国だね」
「だな。まずは、同行を認めさせる」
「まぁ、テツなら大丈夫だよ」
歩いていると街の人達が次々出てきて見送ってくれている。
「テツくん! アリーちゃんの為にお願いね!」
「テツ! 頼んだぞ!」
「テツさん! 頑張って! 必ず帰ってきてねぇ!」
服屋のマーニさん、武器屋のおっちゃん、道行くお姉さん。次々と知らない人にまで応援される。
「必ず、魔物の王を倒して血を持ち帰る! 待っててくれ!」
「「「おおぉぉぉ!」」」
歓声が上がり、みんな手を振って見送ってくれる。
ホントに温かい。
俺なんかをこんなに迎え入れてくれていて。
「テツはもうこの街の人間になってるんだね」
「そうだな。俺を受け入れてくれて、ホントに有り難い」
「ボクも嬉しいな。魔物の王を倒したら、ボクもこの街で暮らそうかな」
ヒロが羨ましそうにそう言う。
俺を受け入れてくれた街だ。
ヒロ達も普通に受け入れられる事だろう。
「いいんじゃないか?」
「じゃあ、俺もこの街に来るかなぁ!?」
ショウもノリノリである。
「アケミもこの街好きだなぁ」
「わたくしもこの街が好きになってしまいましたわぁ」
結局みんなこの街に住むことになりそうな感じになっている。
まぁ、いい街だからな。
ヒロも来るなら家を買っても良いかもな。
シェアハウスみたいな。
どうだろうか。
アリーが目を覚ましたら聞いてみるか。
必ず、目を覚まさせるからな。
決意を新たに勇者達と共に街を出て、隣国の聖ドルフ国に向かうのであった。
まずは、聖ドルフ国で同行を許可してもらわなければ行けないとのこと。
ヒロ達がSランクを狩った証拠を持って行って、魔物の王を討伐に出る。
その際に国の騎士も着いてくるのだとか。
だから、許可が必要だということだった。
まぁ、認めさせるさ。
そして、この街に必ず、戻ってくる。
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