第14話 ギルドにて
「ランクアップ?」
「そう、ランクアップ!」
サナさんが元気よく宣言する。
なんで、そうなったんだ?
俺は、昨日魔物を狩ってきただけで……。
◇◆◇
「「「お帰りー!」」」
家に入ると皆が出迎えてくれた。
こんなにも温かい人達を守りたい。
改めてそう思った瞬間だった。
「おう! テツよ! おめぇ、明日ギルドに顔出せ!」
「ん? あぁ。行くつもりでしたけど」
「そうか。ならいい」
「なんかあるんですか?」
「行ってからのお楽しみだ」
お楽しみ?とは?
何かギルドに楽しい事なんかあったか?
よく分からんが、行くからいいか。
「わかりました」
「じゃあ、ご飯食べましょ?」
ミリーさんがご飯を用意してくれていたようだ。今日はジンさんも一緒に食べるそうな。
「いただきます」
手を合わせて食べ始める。
ジンさんが怪訝な顔で見てくる。
「どうしました?」
「そりゃなんだ?」
「あぁ、感謝を表して食べるんですけど」
「かぁぁ! 男がそんなこと言ってんじゃねぇ! 美味いもんを食う!」
そう言うとガツガツと飯を食いだした。
口からもはみ出しているがお構い無しである。
汚いな。
「で、うめぇ! これでいいんだ!」
ガッハッハッと笑いながら口から色々出しながら食べている。
汚いな。
「ジンさん、ミリーさんの料理が勿体無いです。こぼさず食べてください」
そう言い放つと、ジンさんは固まった。
信じられないものを見る目で。
そっちの味方をするのかとか思ってるんですか?当たり前でしょミリーさんの味方ですよ。
「あぁ?」
「いや、聞こえてたでしょ? こぼさず食べてくださいって言ってます」
「……わぁったよ」
大人しく食べ始めた。
俺も食べる。
ふっと見るとミリーさんがニコニコしていた。
また何が嬉しいのか分からない。
何を思ってそんなに魅力的な笑顔をするんだろうか。横を見るとアリーも同じ顔をしている。
何なのだ?
まぁ、間違ってはいなかったということか。
それで良しとしよう。
とりあえず、美味い飯を食って解散となった。
◇◆◇
ジンさんが言ってたのはこういう事だったのか。これが嬉しいこと?
まぁ、たしかにランクアップは俺の目的の一つだ。上がることに文句はない。
けど、こんなにすぐ上げていいのか?
ギルドよ。
「なんで?って顔してるわね? そりゃあんなに魔物狩ってきたらそりゃそうなるわよ! あれ持ってきてなんでランクアップするんですかって言うのはこっちがなんで?って思うわ!」
こちらの顔に苛立ったのだろうか。
捲し立てるように話す。
サナさんの怒りが俺に向けられていることは分かるが、何故なのかが分からない。
「いーい? テツくん。普通のFランク冒険者ってのは、一日かけて一体狩って来るのが精一杯なのよ」
あの程度の魔物を一日がかり?
サナさん、それこそ嘘だろう?
冒険者のような戦士が狩れないわけが無い。
「まだ、不思議な顔してる。あのね、言い方変えるわね。Fランクっていうのは、見習いの雑用みたいなもんなの。まだ戦えない」
「あぁ。子供みたいなもんだな?」
はぁ?という顔をしているサナさん。
だってそうだろう?
俺達は子供の頃から殺しを教えこまれた。
この世界も冒険者と言うのは子供の頃から狩りを教えているのだろう。
ということは、見習いとは子供と一緒という事。
「まぁ、いいわ。そう。子供は普通あんなに魔物狩って来れないでしょ?」
子供だから狩れないと言うのは子供に失礼だろう。やり方次第でどうにでもなる。
罠を張ったりすれば狩れるだろうし。
運ぶのも荷車を作れば運べる。
「いや、狩って来れないってわけでは────」
バンッとカウンターを叩いたサナさん。
怒りの形相をしている。
「狩れないの! わかった!?」
「あ、あぁ」
ここに来て学んだことがある。
女性がこうなった時は撤退だ。
それに限る。
「なぁに騒いでんだ? ランクアップの話はしたのか?」
「あっ、ジンさん」
「ジーーーン! 聞いてよぉ! テツくんの常識の無さにイライラするー!」
体で怒りを顕にしながらジンさんに訴えている。そんなことを言われてもな。
俺は、しっかりと常識があるぞ。
そりゃ表立って活動来てきた訳では無いから多少は裏の事ばかり知っているが。
「ハッハッハッ! テツはしょうがねぇよ。事情は知らねぇが、相当な修羅場を潜ってきてる。あの程度の魔物なんて準備運動だろう」
あぁ。理解者が現れた。
コクコク頷きながらジンさんを見つめる。
怪訝な顔をするサナさん。
「ホンットに常識外れなんだから、もっとランクアップさせればいいのに」
サナさんが言うが、俺が決めることではないからな。俺に言われても困るんだが。
「まぁまぁ、サナ、そんなことテツに言ったところでしょうがねぇだろぉよ」
コクコクと頷いて同意を表す。
「そうだけどさぁ。今はEランクだから、次のDランクになるにはね、ゴブリンを倒す事ね。それが一番手っ取り早いわ! アイツら数が多いし!」
「たしかにそうだな。テツよ、お前、俺と一緒に同じランクのやつ連れて狩りに行かねぇか?」
ジンさんと狩りは良いが。
留守を守る人が居なくなるなぁ。
「テツの考えてる事は分かる。自警団をアリーと、ミリーの警護につけるからよ」
「俺の報酬から支払えますか?」
「そりゃ、払えるわ。昨日の報酬だがな、肉も一緒に収めて、魔石もあったから全部で十四万二千バルだ。一日警護でも、二万バル位だろう。」
「なら、全然いいですね。自警団って信用できますか?」
昨日の事がある。コザー如きどうにも出来なかったのだ。
弱くは無いのだろうか。
「実力的にはAランクだぞ。出ないと冒険者を、取り締まれないだろ?」
しかし、昨日の感じだと頼りなさそうなんだが。
「言いたい気持ちもわかるがよぉ、自警団も色々あるんだよぉ」
「ジンさんがそう言うなら、信用します」
ジンさんがそう言うなら信用して、提案をのむことにするか。
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