幽霊による怪談会

天西 照実

開会宣言


 さあ、今宵も始まりました。

 幽霊による幽霊のための怪談会。

 この世に残る我々残存霊ざんそんれいの存在にも、ご理解のある住職に協力を頂きまして。ここ、香梨寺こうりんじの本堂をお借りしております。

 誰かに話すことで気持ちが軽くなることもあります。

 愚痴でもかまいません。

 みんなで、浮かばれましょうよ。ね。

 自己紹介が遅れましたが、MCは、わたくしカイ君が務めさせていただきます。

 どうぞ、よろしくお願いいたします!


 カイ君という青年は明るく話すと、座布団に正座したまま深々と頭を下げた。

 広々とした寺の本堂。

 円形に並べたペタンコ座布団に座る幽霊たちが、ハフハフと拍手した。

 薄ぼんやりとした幽霊の両手なので、パチパチとハッキリした音は出ない。

 それでも、ハフハフという拍手は楽しげに聞こえる。

 本堂の仏像を背後に、作務衣さむえ姿のカイ君はきちんと正座し直した。

「それでは、さっそく始めましょう。幽霊による怪談会のスタートです!」

 もう一度、ハフハフという拍手が本堂に広がった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る