Emperor-Game 転移世界で現実帰還を目指す者達の物語 ーロストルートー
@yuukiarai0911
月光の下で春天は舞い踊る
第1話 誘われし夢想の異界
太陽の温もりに包まれ、大聖堂の前で立ちすくむ男が1人。なにがなんだから分からないような顔をして、冷汗を滝のように流し、目を泳がす。
「これは……非常事態だ。ログアウトが出来ない……ってか、そもそもステータス画面が……」
人間は命の危機に瀕すると異様な程に冷静になる。などとほざく人間は沢山いる。しかし、現実というものは非常に無情な物であり、
「アッ,ドッ、エッ……ワッ………」
混乱に混乱を重ねた結果、男は大聖堂前の石畳に放尿を実行するという人間を辞めたかと思われるような奇行に走ってしまった。しかもその位置は街のど真ん中。
「えっ……あの人……」
「しっ!見ちゃダメです!」
街行く人々から浴びせられる白いの目線、いや、ここまで来るともはや、とてつもないほどの同情心が込められた最大級の軽蔑の視線である。
「アッアヘェー」
しかしながら彼は辞めない。というか、止まらない。からだ中のありとあらゆる液体が尿道へと流れ込み、体外に放たれていく。そんな男に茶髪の美少女が歩み寄って行く。
「…おいサクラ。……………ちっ、おい!!!」
彼の頬を美少女が殴り、男が綺麗な弧を描き、3m先の石畳に打ち付けられる。その衝撃でウエと情けない声を漏らすが、その3秒後、目を大きく見開き立ち上がる。
「んあぁぁぁ!!!おぉ!」
腕を空に向かって突き出して叫び出す。
「サクラ……ついに壊れたか。」
「お前のせいじゃあ!カルマァァァ!!」
男、サクラが美少女、カルマの胸ぐらを掴み叫ぶ。
「近づかないでほしい。出来れば、着替えてきてくれないか。」
サクラの股間部分は湿っていてとても見られるような状態ではなかった。
「はっ!こ、これは!悪神!!」
「違う。」
カルマはサクラの腕を掴み、近くの宿屋まで連行して行った。
《Emperor-Game》
2030年、新作VRMMORPGとして発表され、様々なメディアにて取り上げられ、最高のゲーム。と称される程期待されたゲーム。その内容と言うものは、四天龍と呼ばれる存在を倒し、邪智暴虐の皇帝を討ち滅ぼすことを、目標としたMMORPGである。
全世界で期待されていたこのゲームはβテスト開始日に起きたとある事件により、発売中止が決定してしまった。販売元の会社は倒産、開発チームは全員がVRゲーム法違反により、逮捕されてしまった。その事件を後にエンペラー事件と呼ばれ、過去永劫に語り継がれていくことになるになるだろう。
西暦2034年ー日本のとある民家ー
佐々倉優希は暗い部屋でVR機器を装着するための準備を始めた。
「えっと、これは、こうで………」
ふと暗い部屋でスマホの画面が光輝く。メッセージを受信したからだ。
「ん?えっと……あーカルマか。」
(今日のβテストは開始時間から入ってこい。大聖堂前で待つ。)
「りょうかい。っと、さて、やりますか。」
ベットに横たわり機器を頭に着けて起動する。
Emperor-Game βtest
「IDはいつも通り、キャラデザも、いつもの。」
IDーSakura0911と表示され、黒髪で中性的な顔立ちの少年が現れる。
「よし。決定だな。じゃあ、ゲームスタート」
世界歴200年ー始まりの街イリステ・大聖堂前ー
瞳を開け、腕を振り上げる。新たな世界に降り立った佐々倉優希はサクラとしてエンペラーゲームをスタートさせた。
「すげぇな。これが、エンペラーゲーム。」
美しいヨーロッパ風の街並みに、綺麗なステンドグラスが特徴的な大聖堂。いかにもな異世界だ。
「えっと、カルマ……カルマは……」
辺りを見回すと真横に茶髪の美少女がリスポーンして来たのに気が付いた。サクラが美少女に歩み寄り、
「よぉカルマ!」
そうすると美少女は、はぁ、と微笑み、
「おっ!サクラ!」
黒髪の少年、茶髪の美少女が大聖堂前で邂逅する。
これこそ、エンペラーゲーム史上最高のコンビの最初の邂逅であった。
「よし!まずは、次の街、ラヴィンスに!」
「行くぞぉ!!お?あ、頭……が………」
二人はその場に強烈な頭痛により倒れてしまった。
石畳に倒れ、悶え苦しむ。その時だった。頭の中に声が響いて来た。
【私はこの世界を気に入った。四天龍、皇帝を討ち滅ぼし、私の下まで来てみなさい。どんな願いでも叶えてやろう。ついては、この世界を再現した異世界を創造した。その世界で私に人間の不滅の意思をみせつけてくれ。】
異界歴1年4月2日ー始まりの街イリステ・大聖堂前ー
真っ暗な視界に光が差し込む。瞳を開けると、大聖堂の前で倒れていた。
「あ、あー。頭いてぇ……ここ、イリステか?」
辺りを見回してもカルマが居ない。
「んー、ちょっと具合が悪すぎるな……一旦おちるか………ん……ん!?」
こうして始めに戻る。
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