第2話 再会
冷たい雨が降り注ぐ。帰宅時の駅前はバスやタクシー、迎えの車を待つ人でごった返していた。
矢島も バス待ちの長蛇の列に並んでいる。
(バス待ち、めんどくさ)
普段は原付で通勤しているが突然の雨でベンチコートをずぶ濡れになって帰るのは御免だった。
駅からバスで15分、矢島の降りるバス停だ。
住宅街とは名ばかりで民家、アパートが少量立ち並ぶ他は田んぼや畑、コンビニ、小さなクリニックがあり、その少し先に大きな大学病院があるので、ここは箋薬局のたまり場だ。
(コンビニで何か買って帰ろ)
コンビニの前の停留所で降りると街灯の明かりが届かない建物の影で傘も差さず踞ってる人影が見えた。
「大丈夫ですか?」声をかけながら駆け寄り矢島は傘を傾けかけた瞬間、頭髪の色が目に入りドキリとした。
(赤毛? 中学入学式のデジャブ?)
「心配してくれて、ありがとう」
言葉の続き「大丈夫だよ」と言いかけ顔を上げた赤毛は紛れもなく石本 恵だった。
「恵····何? どうしたの?」ファーストインパクトは雷に撃たれたような衝撃だったがセカンドインパクトは何とか平常を装うことができた。
「矢島? 何でこんなところに? 私は転んで頭でも打ったのか?」思わずポツリと呟いてしまった。
「転んだの⁉ 」独り言に大声で反応を示す矢島に恵は現実だと気づく。
コンビニのビニール袋、壊れた傘と鞄が落ちている。そして、ずぶ濡れで膝を抱えて踞ってる恵。
瞬時に状況を把握した。
「お前は、おじいちゃんかよ。ほら」相変わらずの運動音痴に半ば呆れながら手を差し出す。
「しょうがないだろ、ビニール袋を路上に捨てた奴が悪いだろ。こんな雨の夜道で認識できる訳がない。私は夜行動物じゃないぞ」一通り文句を言い終えると矢島の手を借りて「痛てて」とこぼしながら立ち上がる。
「大丈夫?」
「お前を見た瞬間頭を打ったのかと思ったけど、何ともない。足が痛いだけだ。まぁ、打ち身だな」
コンビニに寄って夕飯を買って帰る予定の矢島だったが何故かずぶ濡れの元同級生を抱えている自分。
「俺ん家、ここから直ぐだから服、乾かそ」
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