ソファーの上のあれやこれ ▲

 俺の手を取り、そっと頬に寄せる。幸せそうに笑む彼女を見ると、振り払うことなんてできそうもない。

 この手はつい二時間前、人を殺めた手。ハンドソープの匂いの中、僅かに血の臭いが残っている。

 それなのに、何故、そんな顔を……。

『唯我さん』

「何?」

『ボク、唯我さんの手、好きっす。あったかい』


◆◆◆


 彼女にもう温もりはない。

 声に言葉にいくら熱を込めても、触れ合わせた手から伝わることはない。

 まるで俺から奪うように、いや、与えられたいかのように、頬を擦り寄せるその様は、仄かに色気がある。

『好き』

 冷ややかな口付けと共に零れる掠れた声。

『あったかくて、好き』

 振り払えず、されるがまま。


◆◆◆


 何となくの二本立て、『きままにショートブレッド』オリキャラ、鬼桜唯我と安助柳。


 黒本、無自覚に手で触れ合う話ばっかり書いていて、それで口ではなく手に口付ける、みたいな感じにしましたが……。

 ──いや、それができんなら口吸いもいけるっすよね? とか思いつつ、いざ口に出して手の触れ合いもなくなったら嫌だから黙る安助。

 みたいなのがパッと浮かびやした。


 よしながふみさんの『大奥』、母親が買ってて読んでたんですけど、平賀源内さんが出た辺りで、源内さんが田沼意次さんに「お礼に口を吸ってくれませんか」みたいなことを言ってて、それで初めて接吻以外の別の言い方を知ったんですよね。

 熱烈なお返しを頂いてやした。(こちらの『大奥』では、田沼意次さんは女性の方です)

 ちなみに『大奥』全体の推しは源様です。ドラマ化&アニメ化したら誰がやるんだろー♪

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