第29話 想定の遥か外側

 もしかしてトリッシュとカスミ王女は最初から私に勝利するつもりでいるのではないか?


 そう考えたシェリダンはすぐにその考えを否定する。

 それはそうだ、そも今のトリッシュにカードを貸与するような貴族はいない。

 更に言えば3コストであのような強力なカードがあるのであれば1週間もあれば全土の貴族に知れ渡るはずだ。

 誰だって強いカードは使いたいし、使われる事を考えて対策を練るのだ。

 一度公式の場で使われれば効果は皆に周知されるようなもの。

 だがあのようなカードは今まで見たことすらない。


 あれは何だ?何なのだ?新たに発掘されたカードか?

 考えれば考えるほど泥沼にハマるシェリダン。


「…勝つ気はないのですか?兄様」

「黙れ!」


 それを見ていたトリッシュが嘲笑を浮かべて煽る。


「<王機ウィリー>をもう1体召喚し、<王機パーシー>で<天下二槍 日本号>をアタック!更に破壊された<王機パーシー>は手札に戻り、更にもう一度<王機パーシー>を召喚!


「私は2ターン前に発動した<援軍を呼ぶ法螺貝>の効果で<頼もしい援軍>を2体場に召喚し、そのまま<王機ウィリー>と<王機パーシー>へアタックします」

 頼もしい援軍 3/3000/2000

 このカードは場に出ている敵ユニットへ対し、召喚されたターンに攻撃することができる


 <援軍を呼ぶ法螺貝>により呼び出されるユニット、登場に2ターンかかるのが難点だが、6000火力として使えるのと強化して運用したり、ジョイント召喚やダブル召喚に使えるのが非常に強い。

 序盤に使わないとあまり強さが発揮出来ないカードでもある。


 この攻撃により1体目の<王機ウィリー>と<王機パーシー>は破壊され

 ライフ1000の<頼もしい援軍>が場に残った


「更に場に<ドリランテ>を召喚し、ターンを終えます」

 ドリランテ 3/1000/5000

 [盾持ち]

 このカードとバトルを行う敵ユニットに対し、1ターンに1度だけ追加で2000ダメージを与える



 シーズン8で登場したシーズン11現在でも使われる汎用盾持ちカード。

 戦闘を介す必要があるが、3コスト帯ではまず間違いなく1:2交換が狙え、4コス帯でもほぼ確実に1:1が狙えるカード。

 1ターンに一度の制限が付いているがこれは相手ターンも自分ターンも1ターンと数える。


「だからなんなのだ!お前のそのカードは!!説明しろ!」


 シェリダンは激昂した。

 それはそうだ、4ターン目まででシェリダンが見たことあるカードは1枚もない。

 こんなことはあり得ない、何故ならここ何年も新カードはこちらの地方では発掘されず環境は硬直していたからだ。


「何度も言っていますが、お金を集め、そのお金の対価に借り受けたデッキです」

「だからそれが誰かと聞いている!貴族か!王族か!」

「残念ですが、そのどちらでもありませんよ。素敵な方ではありますけど」

「黙れ!この勝負が終わり次第問いただす!私はこのターン<岩の雨>を発動する!」

 岩の雨 5

 敵ユニット全員に2000ダメージを与える


 シーズン4で登場した汎用全体ダメージ魔法。

 その取り回しの良さからごくまれにシーズン11でも使われる息の長い魔法。


 <岩の雨>によりトリッシュの場には<ドリランテ>のみが残る。


「…兄様、私が何の勝算もなくここに乗り込んできたとお思いですか?」

「…何が言いたい」

「こういうことです。私は5コスト支払い<天下一槍 御手杵>を召喚します」

 天下一槍 御手杵 5/3000/8000

 [盾持ち]

 [鉄壁](このカードは一度だけダメージを0にする)

 このカードがフィールドに出た時、自分フィールド上に<天下二槍 日本号>か<天下三槍 蜻蛉切>が居ない場合、どちらかを選択してデッキ、またはセメタリーから手札に加える。


 このカードは自分のターン終了時に、タフネスが4000回復する。


 自分のターンの終了時、このカードがフィールドにある時に<天下三槍 蜻蛉切><天下一槍 御手杵><天下二槍 日本号>のカードが手札にある場合に発動

 そのコストを1下げる。


 天下三槍デッキのメインエンジン。

 これを5ターン目に着地させれるかどうかが勝ち筋と言っても過言ではない。

 引き込んでくるカードは基本的に<天下三槍 蜻蛉切>一択。

 <天下三槍 蜻蛉切>は7コストなので1コスト下げればマナカーブ的にも自然に出せる。



「私はこのカードの効果で<天下三槍 蜻蛉切>をデッキから手札に加え、<ドリランテ>で<王機ウィリー>をアタック」


 これでトリッシュの場には<天下一槍 御手杵>と手負いの<ドリランテ>、シェリダンの場には残りタフネス2000の<王機ウィリー>が残った。

 次ターン、シェリダンがカードを引くとシェリダンの顔が歓喜に染まった


「私は6コスト支払い<王機マガフ>を召喚!」


 王機マガフ 6 8000/5000

 このカードは攻撃時、相手の効果を全て無効化する。

 このカードが相手ユニットを破壊した時、もう一度だけユニットを攻撃する事ができる。


 このカードが破壊された時、デッキから、<王機>と名の付く魔法カードを1枚デッキから手札に加える。


 <王機>の中ではかなり強く、シーズン6全体で見てもトップ層に位置するカード。

 当時としてはエースとして相応しい性能をしていたがシーズン11ではやはり使われてはいない。

 <王機>と<地王機>は実は一緒に出た訳ではなく、出たタイミングがシーズンの最初と最後らへんと分かれている、これは何故かというと当時のアニメの都合としか言いようがない。

 その為<王機>はジョイント召喚に頼らずとも最低限戦えるスペックがある。


「このマガフの恐ろしさはお前もよくわかっているだろう!次のターン、お前のそのタケハヤかぶれのユニットをこれで破壊してやる!」


 シェリダンは高らかに笑いながら宣言する、その顔に序盤の余裕の顔はない。


「…私のターン、1コスト軽減された<天下三槍 蜻蛉切>を6コストで召喚します」

 天下三槍 蜻蛉切 7/9000/10000

 フィールドに出た時、<天下一槍 御手杵><天下二槍 日本号>のいずれかが場にいる時に発動する

 相手1体に7000ダメージを与える

 この効果は相手の場にユニットが存在する場合、ユニットにしか発動することができない。


 <天下一槍 御手杵>が場に出た時に発動できる、<天下一槍 御手杵>のアタックとタフネスを2000上昇させる。

 <天下二槍 日本号>が場に出た時に発動できる、<天下二槍 日本号>はすぐに攻撃することができる


 <天下一槍 御手杵><天下二槍 日本号><天下三槍 蜻蛉切>が場に揃った時、

 ワースカード<天下三槍揃い踏み>を生成し、追加する。

 この効果はゲーム中1プレイヤーにつき1回のみ発動できる。


 このカードが戦闘で破壊されセメタリーに送られた時、墓地のこのカード以外の<天下一槍 御手杵><天下二槍 日本号><天下三槍 蜻蛉切>をデッキの一番上か一番下に戻しても良い。


 天下三槍デッキのエース。

 <天下一槍 御手杵>から繋いでそのままの勢いで相手を殴り飛ばすのが得意技。

 以降に出す<天下二槍 御手杵>に即時攻撃効果を付与する点もかなり小回りが効く。

 弱点としては場に3体揃えるのが難しい点と単体破壊主体になりユニットを並べられるとつらい点が上げられる。



 <天下三槍揃い踏み> 5

 ワースカード

 相手1体に対し、全ての効果を無視して15000ダメージを与える

 この魔法は相手の場にユニットが存在する場合、ユニットにしか発動することができない。

 ゲーム中1プレイヤーにつき1回のみ発動することができる。



 天下三槍デッキのフィニッシャー、このカードをいかに相手の顔面に叩き込むかがデッキのキモ。



「<天下三槍 蜻蛉切>の効果で<王機マガフ>を破壊、<ドリランテ>で<王機ウィリー>をアタックし破壊します」

「なんだ!なんなんだお前は!そのデッキは!認めん!認めんぞそんなカード!」

「何度も言わせないでください、お借りしたのですよ。素敵な方にね」


 シェリダンは半狂乱になっている、そして後ろのお付きも形勢が悪いと見たか動揺している。


「もう一度言います、私が何の勝算もなくここに乗り込んできたとお思いですか?」


 トリッシュが突き刺すような眼差しでシェリダンを睨み。

 決心したようにこう言った。


「お覚悟を、兄様」


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