第4.5話 恐怖と歓喜 ハルモニア家嫡男 ウィル=ハルモニア

美形の兄ちゃんことハルモニア視点の話です。

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初めは純粋な好奇心だった。


馬車で王都から領地へ戻る途中にとてもとても怪しい男に出くわした。

大きな荷物を持った見慣れない服装で更に召喚器を付けた男が助けてくれと言っているのだ

怪しいの詰め合わせのような風貌に逆に興味が湧き、ネイサンの静止を振り切り

バトルを挑んだ。


自慢ではなく実績として、僕はこのミラエル王国の召喚貴族の中では第三位に位置している。

それなりにカードの腕には覚えがあるし、代々我が家に伝わる<光響>のカードを各地から集めてデッキも強化している、自信はあった。


それがどうだ、僕のデッキは3ターン目以降、怪しい男の出してきたディアドラというユニットにまるで歯が立たなかった。

カードを操る技術とかそういうものではない、カード自体の性能が明らかに今まで見てきたものから逸脱している。


そして更に驚愕したのは200年前に我が家が起って以来、初代様以外誰も使うことができなかったダブル召喚を彼はこともなげに使ってきたのだ。


過去の災害で多くの召喚法が失伝し、現状使えるのは<進化>と<合体>のみ。

そして<合体>カードは長きに渡り停戦中とはいえ仮想敵国である共和国で多く発掘され

あちらが主流となっている。

ここ数年の交流戦では負けが続いており我が国の財政は着実にダメージを受けている状況、彼からなんとしてでもダブル召喚の情報を探りたい。

我が家に伝わるダブルカード<光響聖騎士ハルモニア>を復活させるためにも。


「まずは先般の非礼を詫びよう。私の名前はウィル=ハルモニア、ハルモニア家嫡男のウィルだ、よろしく頼むよ」

「…テンマです、よろしく」


僕は握手を交わしながら彼を観察する。

身長は標準、顔は普通、緊張はしているようだが目は鋭くこちらを警戒している。

僕より少し年上、いや同じぐらいだろうか。

服装は近くで見てもとにかくおかしい、外に出るには薄着が過ぎる。

靴も革のブーツではなく材質が不明のサンダルのような不思議な質感だ

不思議な質感といえば召喚器だ、輝くような光沢の召喚器は王子の使うものですら見たことがない、そして何よりもハルモニア家の名前を出したのにこの返答、一体何者なんだ?


ハルモニア家の名前を出せば少なくとも平民は頭を下げるし、握手となれば両手を差し出す。

しかし彼は僕と同じく片手で握手を交わした、これは対等な立場である貴族の仕草だ。

しかし彼のような貴族は見たことも聞いたこともない、それ以前に貴族であればまず家名を名乗る。

そしていくら平民とはいえハルモニア家の名前を知らないということはあり得ない。

共和国民ですら我が国の有名な戦闘貴族の名家はで言える、ハルモニア家にはそれぐらいの知名度はある。


つまり彼は貴族でなければ平民でもない、スラムの住民であれば可能性はあるがスラムの住民にしては身なりが小綺麗過ぎる。

ともあれ、彼の質問に答えつつこちらも情報収集といこう。



彼からの質問は理路整然としており、かつ一貫性もあり確かな知性を感じさせる。

少なくとも貴族と同等かそれ以上の教育を受けているのは間違いない。

これでスラムの住民であるという線は消えた、残る可能性としては家名を隠す必要のある貴族だ、だから僕は彼にカマをかける事にする。


「とりあえず今僕が断言できるのは君が僕を脅かす刺客・暗殺者ではないという事だね」

「根拠を聞いてもいいですか?」

「今の世相で僕を暗殺することに意味がないからかな。仮にテンマ君が暗殺者であるとして行動がお粗末過ぎる、油断を誘うにしても限度がある。そして暗殺を目的とせず召喚士の刺客であれば絶対に単独では来ない、周りの護衛に対処する為にかならず同等以上の人数を揃えるからだ、僕ら召喚貴族は挑まれた勝負を断れないからね」


さあどうだ。


「失礼ですが、召喚貴族とは?」


かかった、これで貴族の線も消えた。

家名を隠すだけでここまでやる必要はない、というよりも純粋に平民ですら備えている一般常識がなさ過ぎる。

ここまで来ると記憶喪失を疑うが、記憶喪失ならばカードラプトの記憶も消えているはず。それでまともな戦いができる訳がないしここまで饒舌に受け答えができるとは思えない。

しいて言うのであれば先のバトルで彼をロニーで攻撃した時の狼狽ぶりが気になったぐらいだが、そこは今はいいだろう。


「…召喚士としての強さを王に認められた者といえば分かるかな?召喚貴族は各種の特権を持っている代わりに正当な手順を持って挑まれた勝負を基本的には拒否することができない。その上で召喚器に勝敗が記録され定期的に国に公表する義務がある。この記録は誰でも閲覧することができ、そこで刺客に負けていたことが発覚すれば家名に傷が付く、ということさ」

「さきほどの戦いはどういう扱いになるんですか?」

「両者合意の上での戦闘中止だね、貴族の場合金品やカードを渡して中止にする事が多いから回数が多いと問題になるけど僕は大丈夫」


ここまで聞いた話を聞いた上で考えると彼は


貴族並の教育を受けている

それなのに一般常識を知らなさ過ぎる

明らかに僕らの知らないカードを持っている

ダブル召喚について確実に情報を持っている

ブラフの可能性もあるが現状、非常に困っている


共和国やそれに類する第三国の間者の可能性もあるが、あのようなカードを

間者に持たせる国なぞあるわけがない、国家対抗戦や国内戦で使用するほうが何倍も有効に使えるしあのカードが間者にも使えるほど存在ある国なんてとっくの昔に話題に上がるはずだ。

そう考えればリスクを背負ってでも懐に入れる価値はある

もし間者であれば処理すれば良いだけだ、その場合あのデッキと荷物と召喚器がまるごと手に入る。

そう結論付けて僕は口を開いた。


「約束にはないけど僕からも1つ質問良いかな?この返答によっては君を貴賓扱いで我が家に招待したい」

「君が刺客ではないのはやりとりで大体分かったし、現状大変困っている事も認識しした、その上でも僕も君と君の使っているカードにとても興味がある、先程の脅迫のようなやりとりと違って今回はお互いに益があると思う。どうだろうか?」


そう決めたのであれば少なくとも現段階では誠実に向き合わなければならない。

この教育程度であれば僕が思っていることぐらいはある程度見透かしているだろう。



「…答えれる事であれば」

「ありがとう、では聞くよ …どうして君はダブル召喚を使えるんだい?」


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光響聖騎士ハルモニア 3/4000/5000

<光響>と名の付くコスト3のユニット+コスト3のユニット

OU:このカードが戦闘する時に発動できる

戦闘中のみアタックを+5000する

相手ターンの終わりまでタフネスへのダメージを一度だけ0にする


シーズン4初期に登場、アニメ主人公の使うカードということもあり強めに設定されており

召喚をサポートするカードが多数存在したため

開始初期は「こいつだけは強い」と長く使われ続けた

シーズン11では流石に型落ちとなっているが人気が高く後継ユニットが多数作られている。


ちなみにマナが回復するのは自分のターンの最初のドローのタイミングの為、

相手ターンにマナを3残しておけばOUは相手ターンでも使用できる。


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