第1話

「おい、やめろよ」

そんな声は画面の奥の闇へと届く気配もなく、だが一握りの希望に心を寄せながら。

ルイは抵抗の声をやめない。

画面に映るのは見渡す限りの闇と、薄暗く映し出された部屋の一角。外の時間も空気もわからないような空間に閉じ込められているのは、彼の友人らしき者。それは不確定ではあるが鎖に腕を巻かれており、その横では一つの影が体を揺さぶるように小さく動く。

「De#a,Oma3n1nΛn1ga@run0da?」

「…………」

もはや聞こえないようなか細く恐ろしい声で影はルイに問う。

タイマーは、着々とその針を0へと進める。

「M0us0r0s0r0dΛなa」

影は突如行方をくらまし、何処かへと歩を進めるために立ち上がった。

「オイ!!聞こえてるんだろ!サラ!!」

「…………………この声は……………………ルイ……………………」

「そうだ……………」

「もういいだろうぁ………?」

「は?」

「もういいだおろぉとい"っっでンダよぉ!!!」

びくりと、

ルイの体が宙に浮く。

カーソルを持つ右手は震えており、画面を見つめる目までもを虚なものとしている。

だが、友を殺すわけにはいかない。

「…………何が、あったんだ………?」

慎重に言葉を選びながらルイは今度は優しく話しかける。

「もう、なくきりゃくすらでぇないよ…………」

声に前までの覇気はなく、言葉は濁音や伸ばし棒で汚されている。

「あいつがよぉ、ながぁ……………、いや、最初縛ったんだよぉ」

「………」

ルイは無言で続きを待つ。

「だがらよぉ、逃げようとしたんだけどよぉ、こんどはお決まりの「命令」だよぉ………」

命令も、お決まりも、何一つとしてルイは理解ができない。

そんな彼の気持ちを瀕死の状態で感じ取ったのか、

「画面のぅえにボタンがあるだろぉ……?それをあいつら押しまくってヨォ……、下痢、嘔吐、イラマ、ケツ穴、イッキ、シャブ………、ありとあらゅる苦痛をよぉ………」

「Who allowed you to speak with others?」





ギュルギュルギュルギュル……


まるで刃物が高速で回転しているかのような音がイヤホン越しに聞こえる。

今癇癪起こした男が手に持っているそれは想像するしかない。

だが、やはりあれしかない。

「#a,saΛ,Haj1mAr1dΛ」

「あ、あ、あ、あ……………………やべへぇ!!!!!近づかないでぇ!!!!!!!!傷つけないでぇ!!!!!!!!!!!!!」

どこにあるのかもわからない闇の中で、サラは叫び散らかす。



だがいつでも、罪悪は始めにくる。



****************************************************************



「ギャァぁぁあいあいぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」

普段の笑い声からはかけ離れた跫音が、部屋に響き、だが右の腕は切られたことで解放された。

「"い""""""だがぃ!!!!!!!!もぅ、いやばぁ!!!!!!!がぇじで!!!!!!もう、がぇじで!!!!!!」

聞いたこともないような声にルイは硬直を続けた。

次は自身の番だと、自覚したからだ。

こうして連鎖は続いていく。

負の。


「るぃ"""""!!!!ダズげでぇ!!ダズげでぇ!!!!!ごのまぁまあじゃあ、あたしい!!!!!!」

「what a loud toy 」







ドン!!!!!

ドン!!!!!

2発の弾が、宙を切り闇へと消えていく。





「………」



言葉が出ない。

戦慄が続く。

恐怖が、彼を支配していく。





今目の前で殺人を犯した男は、徐に画面の前に立つ。

その顔は黒く、奥が見えない。

「......hey guy 」

「......where does she go ?」

意味のない質問、そんなことだとはわかっている。

だがただ、縋りたい。

「......eh......hell ?」

「It's you next !!!」

「hehe..」

軽く受け流される復習の言葉。

何もかもが、軽く見えてしまう。

「ok , last , it's a caution 」

「…」

「If you say anything about this all , at others , you will be a substance , like a doll 」

「…」

「BE CAREFUL」





雑音はない。

あるのは確かな復讐心と、悲しみだけ。

彼の愚かな全ては、ここから始まっていく。




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