第24話 ハイフラ

バイクに乗って数か月、マサミのカスタムは進んでいない。

原因は金だ。とにかく金がない。

毎日狂ったようにパチンコに没頭する。

『勝ったらカスタム、勝ったらカスタム』

心の中で言い続ける。

しかし勝てば勝つ程、次の軍資金になるのだ。

そもそも負けの方が多い事が分かっていない。いや、認めたくないのだ。

ギャンブラーあるあるである。

パチンコ屋も商売だ。勝てる率が低いのは言うまでもなかった。

ましてマサミは時給のいいパチンコ屋でバイトをしている。

負けている奴は嫌という程見てきた。

このままではフルカスタムなど程遠い。


給料日の翌日、マサミは思い切って先にカスタムパーツを買った。

ウィンカーにミラーだった。

フェンダーも変えたいところだがフェンダーは車高も一緒に落とさなといけない。車高が高いままフェンダーを変えてもカッコ悪いだけだ。

それにフェンダーと車高を変えた場合、10万コースだ。

そんな金はどこにも無い。

カスタムは自分でやってなんぼ・・・

カズヨシからは耳にタコができるほど言われていた事だ。

だから当然自分でやる。

野暮ったい大きさの純正を外す。

純正のウィンカーが付いていたところに新しいウィンカーを取り付ける。

リアはフェンダー部にステイがあるのでそのまま取り付ける。

問題は配線だ。

リアはうまく取り付けをしないとタイヤに配線が当たってしまう。

ビニールテープを駆使し余分な配線を格納した。

ミラーは四角い純正を両方外し右側片側に購入した楕円形のものに交換。

少しずつ容姿が変わっていく。

少し変えただけで走りたくなるものだ。

キーをひねりエンジンをかける。

ウィンカーを点灯させてみる。

チカチカチカチカチカチカチカ・・・

高速で点灯した。

・・・・・

失敗だった。

恐れていた事だった。

規格の異なるものを点けると点灯しっぱなしやハイフラを起こす。

最悪一発で玉切れを起こす。

配線が焼き付くとタカやカズヨシから言われていた。

しかし未点灯のまま乗るわけにいかない。

マサミに知識はなく目に見えない電気は最も苦手だった。


翌日、地元に帰り修理をお願いした。

「また、違法改造だよ・・・」

店長は半ば呆れながら修理をしてくれた。

修理費は1万円ほど。


前途多難である・・・。






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