第20話 排気漏れ
マフラー交換の翌日、嬉しさの余りバイクを乗り回しているが何かおかしい。
時折り発砲音にも似た音が聞こえる。
どこかで工事しているのかと思っていたがどこでも聞こえる。
バイパス下を通過した時、ギアを一つ落とした時だった。
パァァン!!
物凄い音が鳴り響いた。
『このバイクだ!』
『俺のバイクから出ている』
ガード下で響くとはいえ毎回こんな音を出して走っていた事に焦りを感じた。
音の出るタイミングを探る。
音が出るのはエンブレを掛けた時だ。特に3速でそこそこスピードが乗った後にエンブレが掛かると物凄い破裂音を発する事が分かった。
『でもなんで鳴るんだ?』
理由は分からなかった。
『マフラーのせいか?このマフラーはそもそもこういう音がするのか?』
考えても仕方がない、アパートに帰りバイクを止める。
ふとエンジンを見ると黒い液体が飛び散ったような跡があった。
これだ!排気漏れだ。
よく見るとフロント側のエンジンのマフラーの付け根から出ている事が分かった。
見た目で隙間があるようには見えなかった。
エンジンは触れないほど熱い。
マサミはどうすることもできずそのままにするしかなかった。
翌日、カズヨシと関ぴょんに話す。
「やべぇよ、排気漏れしてる」
「いいじゃねぇか、ワイルドで」
適当な返事だ。
「いやいやさすがに排気漏れはダメだろ」
「今日夜走って見てみようぜ」
その夜カズヨシ、関ぴょん、江口と走りに出た。
夜の街を流す。
相変わらず凄い音がする。
とある店の駐車場にバイクを止めて検証を始めた。
まず関ぴょんが乗りその様子を見る。
ボボボーースパァン!!
夜だから余計に響く。
「すげぇな」
次にカズヨシが乗る。
そもそも豪快に回す奴だ。特にうるさい。
ボボボーーパン!スパァン!!!
マフラーから火が見えた。
「すげぇな、バックファイヤーだぜ」
関ぴょんが興奮していう。
『夜だから分かったがこんな過激なことになっていたのか・・・』
「これまずいからサイレンサー入れるよ」
「さすがにうるせーよな」
翌日、マフラーにサイレンサーを入れた。
サイレンサーといっても穴あきの鉄パイプにグラスウールが撒いてあるだけのもので簡単な作りだった。
六角ボルト1本で取りつけ完了。
乗ってみると確かに音はかなり抑えられ爆発音もポン!と鳴る程度に収まった。
ただ音がこもる。
これが許せなかった。
その週末、カズヨシの家にいきマフラーの点検に取り掛かった。
ボルトを緩めフロント側を外す。
付け根は真っ黒だった。付いていたフランジも真っ黒だった。
「何かおかしいよな」
「どこが悪いんだろう?」
2人で綺麗に汚れを拭きとりしっかりと取り付ける。
これで問題ないはずだ。
「よし!これで解決。なぁ、サイレンサー外せよ。バックファイヤーも治った事だし」
「ん~、迷ってる。うるせぇし・・・」
「おめぇビビってんのか?」
「んな事はねぇけどさ」
「音も抜けわりーだろ?」
「まぁな」
半ば無理やり外す事になった。
カズヨシはワイルドで度胸があるから気にしないようだがマサミはやっぱりビビっていた。
しかし仲間の前でビビっている姿は見せられない。
結局もとの直管に戻した。
マサミはバイトがあった為すぐに帰らなければいけなかった。
「んじゃ、帰る」
「おう!」
カズヨシの家を出て数分。
パァァン!!
・・・
治っていなかった。
『もう嫌だ』
路肩にバイクを止め車載工具を取り出した。
さっき外したサイレンサーを取り付ける。
新潟のアパートまで1時間、心は折れたままだった。
休み明け、専門学校でカズヨシが言った。
「おめぇ、またサイレンサーつけたな?音籠ってんゾ」
「わかった?あの後大変だったんだぜ。白バイに止められてさ」
「うっそ?マジ?」
とっさに出た嘘だった。
「バックファイヤー治ってなくてさ、すげぇ音したから、たまたま張ってた警察にとめられた」
「で?」
「君!バックファイヤーしているじゃないか!って」
よく考えればわかる事だった。バックファイヤーが分かったのは夜だったからで昼間は誰も気が付かなかったのだ。
「捕まった?」
「捕まっていはいない、ただ違法改造だって言われてさ、でその場でサイレンサーつけた」
「音にビビってつけたんじゃねぇーの?」
いきなり関ぴょんが口をはさんだ。
「ち、ちげーよ」
「んな、むきになるなよ」
人はこころを見透かされるとむきになるものだ。
「とにかく、今度の休み地元のバイク屋に行ってみてもらうよ。マフラー壊れていたら嫌だし」
「そーだな、それがいい」
その週末、マサミは実家に帰りバイク屋に見てもらう事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます