第16話 無計画

夜の首都高はヤバい。

マサミは恐怖を感じ始めていた。

都心に向かうにつれて更に交通量が増える。

交通量もそうだが追い越していく車のスピードも速かった。

先頭はカズヨシ。ガンガン飛ばしている。

それに続く関ぴょん。

そしてタカ。

スティードでよく喰らいついている。

そして江口が続く。

江口は飛ばし屋ではない。それがマサミには救いだった。

マサミからは既にカズヨシと関ぴょんは見えなかった。

タカの光輝くウィンカーで何とかついて行けた。

それでも引き離されていく。

『マズイ、カズヨシ早すぎだろ』

イライラと恐怖、焦り、しかし集中していないと事故ってしまいそうだった。

アップダウンにカーブ、確かにこの道は乗りこなせば楽しいかもしれない。

そんな事を考えていた時だった。

すぐ後ろに黒い車が迫り左右に動く。

『やべぇ煽られている』

そう思った時、黒い車は隣にいた。

『このままだとインターに押し出される!』

慌ててブレーキを掛けやり過ごす。

黒い車の後ろになり押し出されるのを回避した。

すぐにアクセルを開けタカを探す。

『あのまばゆいウィンカーは?』

先に見えるテールにほっとする。

『江口は?』

いた!

赤いテールが見える。

どこをどう通っているのかマサミには全く分からなかった。

ただひたすら飛ばすだけだ。

周りの景色も標識も目に入らなかった。

また煽られる。

今度はスポーツカーだ。

『事故る~!!』

必死だった。また減速しやり過ごす。

その時だった!

そのスポーツカーはマサミにしたように江口を煽っていた。

そしてインター付近で江口の横に並ぶ。

江口の赤いテールランプはは押し出されるようにそのままインターに消えていった。

!!!

降りるのか?

インターは目前だ。

一瞬にも満たない時間で考える。

『ここで降りるのか?』

でも江口はまるでインターに押し出された感じだった。

タカは?!

一瞬右のカーブに消えるオレンジの2つの光が見えた。

どっちだ?一瞬で選択を迫られる。

その時にはもう遅かった。

マサミはインターを降りず、いや厳密に言えば降りる余裕もなくそのまま通り過ぎた。

標識は北池袋。

江口は完全にはぐれた。

『やべぇ江口がはぐれた、江口がはぐれた』

何度も心の中で叫び、何とかタカに追いつこうと必死に走った。

焦りしかなかった。

しばらく走るとタカのテールは少し近づいたようだった。

そのまま見失わないように走る。タカも着かず離れずの距離を保っていった。

マサミに気遣っているようだった。

どこをどう走ったか覚えていない。

タカについていくと料金所前でカズヨシと関ぴょんが待っていた。

そそくさと料金を払い路肩に止める。

「やべぇよ!江口がはぐれた!」

真っ先にマサミが叫んだ。

「嘘だろ?」

関ぴょんとカズヨシが顔を見合せる。

「てめぇ早いんだよ!」

タカがマジ切れしていた。

「おめぇらと俺らは走り方が違うんだよ!」

「わりぃ」

小さな声でカズヨシが言った。

「どうすんだよ」

「はぐれたのは北池袋」

「もどるか?」

「いるかもわかんねぞ」

「どうするよ」

「どうする?」

携帯もないこの時代、考えてもどうしようもなかった。

あまりにも無計画過ぎたのだ。

行先も宿泊先も何も決まっていない。

自分たちの無謀さに後悔していた。

「とりあえず戻るか」

「戻るって?帰るってか?」

「あぁ」

力なくカズヨシが答える。

先頭を走っていた責任を感じているようだった。

「江口大丈夫かな」

「心配だな」

・・・

「よし、とりあえず新潟に向かおう」


こうして4人は新潟に向かって走り出した。






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