第14話 横浜
5月8日、いよいよツーリングだ。
マサミは6時にアパートを出て江口のアパートに向かった。
アパートに着くと江口は既に外に出ていた。
「ウィっす」
「行くか」
2人は眠い中新潟市を出発した。
走ること約1時間、待ち合わせ場所の三条市の国道8号添いの健康ランドに着いた。
1台のバイクが止まっている。関ぴょんだ。
3人で待つこと10分。
アメリカンの爆音と、SRの抜けの良いキャプトンマフラーの音が響いてきた。
カズヨシとタカだ。
一旦バイクを降り、タバコを吸いながらルートを確認する。
当時、ナビはもちろん携帯電話もない時代だった。
カズヨシが地図を指でなぞり確認していく。
「このままずっと国道行って群馬に抜ける」
「で、川越あたりで国道16号にいく」
「でもってデイトナパークにいく。OK?」
「いや、はしょり過ぎだよ」
「とりあえず2時間毎に休憩すっか」
「ま、とにかく行こうぜ」
こいつらはとにかく計画性がない。泊まるところの決まってはいなかったのだ。
こうして5人で走り出した。
途中、湯沢のコンビニで休憩し三国峠に入る。
峠に入ると曲がりくねった道が続く。
カズヨシが先頭で飛ばし始める。
カズヨシ、関ぴょん、タカ、江口、マサミの順だ。
バイクの性能もあるが運転テクニックの順でもあった。
マサミ以外のバイクはすべてマフラーを替えてあった。
山道に爆音が轟く。
マサミは必死だった。ただでさえバイクテクがないのだ。
徐々に引き離されていく。
と、その時だった。
前から何かが走ってくる。
進行方向に対し左は崖、右は壁になっていた。
その壁を何かが狂ったように迫ってくる。
カモシカだ!
バイクの爆音に驚いたカモシカがパニックを起こし壁をずり落ちながら走ってきたのだ。
うわっ!ぶつかる!そう思った時にはすれ違っていた。
ほっとした。
もしぶつかっていたらただでは済まなかった。
ドキドキが止まらない。
思いがけないハプニングだった。
しばらく走るとマサミ以外の4人が路肩で休憩していた。
「お前らはえ~よ」
マサミが言う。
「こいつバカだよ。飛ばし過ぎ、少しは後ろの事を考えろ」
タカがカズヨシに向かって言った。
「俺はついて行けるぜ」
関ぴょんは余裕だった。
「あの獣なんだ?ビビったな」
「イノシシか?」
「ありゃカモシカだよ。国の天然記念物」
マサミは動物にめっぽう詳しい。子どもの頃の夢は動物博士だった。
「音にビビったんだな」
マサミが得意げにうんちくを垂れようとする前にカズヨシがかぶせてきた。
「んじゃ行くか」
「はえ~よ」
マサミはついたばかりだ。タバコを吸い終わる前にもう出発だった。
「待ってらんねー」
再び走り出した。
峠を無事に越え関東に入る。
川越付近で16号線に入った。
しばらく走るとデイトナパークが見えてきた。
ここは所ジョージプロデュースだ。
田舎者たちが入っていく。
都会のテーマパークに緊張しながら入っていった。
ゲーセンコーナーを抜け屋外の展示場に出た。
目的は展示されている車だった。
アメ車がずらりと並ぶ。
キャデラックにコブラ、なんだかわからないが超ぶっといリアタイヤの車。
ハーレーもある。
どれも迫力満点だった。
立ち入り禁止だったが興奮した5人は中に入り写真を撮りまくった。
大のアメ車好きの関ぴょんはコブラのボンネットに抱きついていた。
たまらず警備員が注意しに来る。
「ダメダメ、やりすぎだよ、どこから来たの?」
「新潟っす」
革ジャンにブーツ、金髪にピアス、いかついスタイルの連中だったが警備員は慣れているようだった。こういう連中が多く来るのだろう。
「んじゃ車に触らないようにすればもっと近くで写真撮っていいよ」
優しい警備員で田舎者の行為を多めに見てくれていた。
しばらくしてデイトナパークを出る。
時刻は夕方。ようやく横浜に入った。
ここから長い夜が始まる・・・。
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