第18話 ダンジョン攻略開始⑤:背中にある図形、そして二度目の鳴動
【お金がないって】都市伝説スレ part14【おっかねえ】
113:名無しのハンター ID:******
死刑囚って、身体に犯罪記録を刻まれるらしいな
で、肉体資源を利活用させられるとのこと
利活用って一体なにさせられるんだろうな
114:名無しのハンター ID:******
死刑囚だけで構成された迷宮開拓部隊あるって聞いたけどホント?
未解放区測量部フロンティアの部隊らしいけど
115:名無しのハンター ID:******
生体識別コードの改ざんは死刑定期
116:名無しのハンター ID:******
>>113
何かこの前、風俗で働いてる死刑囚いたはず
117:名無しのハンター ID:******
利活用ねえ
死刑囚の臓器移植は結構頻繁に行われているらしいよ
宗教や倫理の問題もあるけど、先端医療で救われる命が増えるんだから妥当じゃないかな
118:名無しのハンター ID:******
うげえ
死刑囚の身体の一部が自分の中に入ってくるの気っ持ちわりー
119:名無しのハンター ID:******
ついこの間、美しすぎる死刑囚が脱走したらしいね
俺を襲ってほしい
120:名無しのハンター ID:******
俺たちの生体識別番号って他の人と偶然重複したりしないのかな
何億も人がいたら被るような気がするけど
121:名無しのハンター ID:******
天誅忍者が女ってマジ?
だとすると、女性vtuberが付き合い出した男をNTRまくるクレイジーサイコレズビッチってことになるんやが……!?
122:名無しのハンター ID:******
>>113
死刑囚の生体識別番号に何かを入れるのはマジっぽいね
万が一でも野に放ったら何をしでかすか分からないから、治安維持のための施策みたいだよ
で、背中に目に見えない特殊な判別図形が浮かび上がるんだとか
123:名無しのハンター ID:******
>>121
せやで
124:名無しのハンター ID:******
俺のおニンニンをニンニンしてほしい
125:名無しのハンター ID:******
>>119
脱獄ってなんで? やっぱPref:GUMMAだから?
126:名無しのハンター ID:******
病院のカルテのような複雑なビッグデータは、深層学習のためにラプラスが統合管理してるって噂
おかげで初期問診の段階での誤診が10%減ったらしい
あくまで噂だけどね
127:名無しのハンター ID:******
>>121
忍者とかおるわけないやろww
これはデマですわww
128:尊厳維持機構 ID:******
これは実験的な文章ですので気にしないでください。
クリアランス-Lv.5:重要なお知らせです
「霑キ螳ョ」という言葉を記憶してください。
これは適切な試験ですので、二回以上の記憶は厳禁です。言語野と連想記憶と尊厳および創発性の研究に役立ちます。
自覚症状及び他覚的所見:言葉を忘れない間、尊厳維持のため寒気、動悸を覚える副作用があります縺ゅj。絶対に「」の言葉を口に出さないでください。誤った単語を記憶してはなりません。
幻覚症状および依存の関係性:管理保健機関MHOによる調査では報告されていません縺帙s。尊厳は維持されます。
禁忌事項:バルビツール酸系睡眠薬の摂取(動悸を悪化させてしまう危険性が予測されるため)
以下に当てはまる方は施術内容を一部変更、または省略し、施術を行わせて頂く可能性がございます。
心臓疾患のある方、悪性腫瘍がある方、その他体調が優れない場合。
この実験文章の再読は厳禁です。記憶形成に影響をきたします。本実験は医学的状態を改善します。
社団法人 尊厳維持機構より
129:名無しのハンター ID:******
あーんあーん
130:名無しのハンター ID:******
>>122
死刑囚の背中にどんな図形が浮かび上がるのか情報ある?
あと目に見えない図形ってどういうこと?
131:名無しのハンター ID:iAmKuNo1
ニンニン
◇◇◇
お湯の温度は冷めることなく適温が保たれていて、長湯するにはちょうど良い塩梅であった。
話の流れで奇妙な混浴になってしまったが、一緒に入ってしまえば慣れたものである。身体に飛び散ったミミズの体液をすっかり綺麗に洗い流した俺たち二人は、そのままゆったりと湯を満喫していた。
階段に腰掛けながら、めめめんが小さな声で質問をしてきた。
「ネクロってさ、自分の背中見たことある……?」
「……。いや、ないよ」
「じゃあさ、背中に図形が浮き出る人の都市伝説は聞いたことがある?」
どきりとした。動揺が顔に出ていないか心配になった。
はっきり言うと、俺は嘘をついた。この質問は、俺の肺腑を抉るような重たい意味を持っていた。
俺は自分の背中を見たことがあるし、背中に図形が浮き出る人の都市伝説を知っている。
隕石が降ってきたあの日の後、俺は、自分の背中に図形を見つけた。そして謎の声を聞いた。
その瞬間、俺の正体を少しだけ掴んだ気がした。
俺は、背中に図形がある。
旧警察病院に足を運んだのは、背中にある模様の意味を知りたかったから。
――本当は、俺は犯罪者だったのではないか。
――もしくは、俺はテロリストだったのではないか。
――それとも、この背中の図形にはもっと別の意味があるのか。
俺は、俺のことを知らない。
記憶がないのだ。
いつどのように生まれて、どのように育って、そして今に至るのかを全然理解していない。
生体識別番号だって、実は右手の静脈識別と左手の静脈識別でばらばらなのだ。右目や左目の網膜識別さえも一致しない。自分が何者なのか理解していない。
自分自身が、空白のがらんどう。
がらんどうのネクロ。
「……。都市伝説か。あんまり詳しくないんだよね。もしかして背中に何かある?」
だからもう一回だけ嘘を吐いた。全然上手でもない嘘を。
俺は、自分の背中に浮かんでいる図形のことを、このまま全部ぶちまけてしまいたい衝動に駆られていた。だがそれでも俺はあえて隠すことを選んだ。
何故なら彼女の思いが分からなかったから。
「……。ううん、ネクロの背中にはないよ」
「ネクロには?」
「めめめんの背中、見る?」
「……。背中に何かあるのか?」
答えはない。ただ、喉が鳴る音が聞こえた。
濡れて肌に張り付いているシャツがめくられていく。俺は思わず息を呑んだ。
「……。何か見える?」
「……。いや、何も見えないよ」
彼女の小さな背中。
そこにあったのは、カバラ数秘術の図形。
クリフォトの樹。
俺の心臓は、かつてないほど早鐘を打っていた。俺と同じ人がいる。俺と同じように、背中に図形が現れている人が目の前にいる。そして彼女は、俺の背中にある図形を見てしまっている――。
「……。何も見えないんだね」
「……。そ、れは」
死刑囚。
俺と、彼女は、死刑囚、かもしれない――。
「……。シャツしか着てないのに背中までめくったらケツが見えるぞ」
「ぎゃあ!?」
「馬鹿こっち向くな!」
「ぎゃあああ!?」
彼女はこけた。だから彼女の腕をつかもうとした。
咄嗟に俺は立ち上がった。
だから――。
「ぎゃあああああ!?」
叫び声。めめめんの目が大きく見開かれた。
瞬きすらないガン見だった。釘付けの視線とはこのことだった。さっきまでの空気がぶち壊れだった。
そして、ほぼ同時にダンジョンが再び揺れ始めた。
二度目の鳴動。そして急激に高まる嫌な予感。得体のしれない寒気が背筋を走った。
全てが吹き飛んだ。色々あった気がするが全てどうでも良くなった。
「……構えろ」
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