第13話 ダンジョン攻略開始②:うじゃうじゃ湧く多数の敵を倒してじわじわレベルアップするやつ

(だけど、所詮はミミズだ。むざむざ近寄って齧られたりしなかったら問題ない……!)


 視界を埋め尽くすミミズの大群を前に、俺は深く息を吐いた。


 数だけ考えれば状況は不利だが、問題ない。

 そう、ダンジョンワームは遠隔攻撃の手段をほとんど持っていないのだ。近寄ればそれこそ、ぶよぶよした身体で巻き付いてきてゆっくりこちらを溶かしてくるが、距離を取って戦えば問題はない。


 スケルトンたちに指示を飛ばし、地面の岩を拾って投擲させる。

 ぶちゅ、ぶちゅ、と何匹かのミミズの身がつぶれる。結構グロテスクだ。


「少しずつ後ろに下がって石を投げていくぞ! どうしても近寄るやつは、俺たちの使役魔獣で排除する」


「! うん、分かった」


 わあ、わあ、とぶちゅぶちゅ潰れていくミミズに見とれていためめめんメイラが、一拍遅れて俺に続いた。

 そう、死霊は痛みを感じないし、疲れを覚えない。これだけの数のミミズの魔物の大群に晒されても、淡々と長時間、目の前のミミズを処理し続けることができる。

 いざとなってもしばらくは壁代わりになってくれるだろう。


(敵の数に焦るなよ……《魂魄の欠片》と魔石をたくさん回収できる機会だと考えれば、これほど美味しい話はそうそうない)


 耳に残る生々しい嫌な音を立てて、ミミズがどんどん潰れていく。狼ゾンビがミミズを食いちぎり、ケンタウロス型スケルトンが四本腕で角材を振り回してミミズを叩き潰す。

 おぞましい戦い。背筋の寒くなるような光景だが、突出しすぎなければ均衡が崩れることはない。


(ゆっくり下がっていけばいい。退路さえ確保できていれば、命の危機はないさ……)


 ――そう、退路さえ確保できていれば。

 じりじりと気の抜けない戦いが続く中、まだ俺は希望を持っていた。

 不意に地下鉄ダンジョン全体が鳴動したような気配がしたのは、まさにそんなときであった。






 ◇◇◇






『なあメイラ、君って鉄鋼車両に乗ったことはある?』


『ん? んー……ある。でも、めめめんね、あんまり覚えてないの。宿泊車両内で生活できるってことだけは覚えてるよ』


『めちゃめちゃ快適だぜ? 一等車両だと、個々の車両が巨大なトレーラーハウスみたいになってるんだ。二階建てになってて、巨大な宿泊室、シャワールームとトイレ、キッチンダイニング、大きなモニタが付いた談話室とかがあるんだぜ』


『……あー、えっと』


『A級探索者とかだったら乗れるらしいけどなー。俺さ、一等車両に乗ったことないんだよなー。だからさ、ちょっとした憧れがあるんだよなー』


『……そっか』


『なんだよー、もっとはしゃいでもいいじゃんか。楽しそうだろ? ホームセンタから使えそうな物資を軒並み回収してさ、鋼鉄車両であちこち旅行して、旅レポ動画を撮るんだ。そしたら君の動画もきっとバズるぜ?』


『! そ……っか。そうだね、うん。この場所から出ていけるもんね。学校とかからも……』


『だろ? 楽しそうだろ? この世界できっと君だけなんじゃないか? そうやって解放区の外の世界の動画をどんどん発信するようなVtuberって』


『……。めめめん、考えたこともなかったな……そうだね、戻らなくてもいいんだ……』






 ◇◇◇






 ■カンザキ・ネクロ

【探索者ランク】

 D級探索者

【ジョブクラス】

《一般人Lv7→8》《死霊使いLv1》

【通常スキル】

「棍棒術3」「強靭な胃袋1」


 ○魂魄消費数(40→45):

 使役魔獣(39→38)

 - ケンタウロス型スケルトン(2) × 17匹

 - オルトロス型ゾンビ(2) × 2匹

 - 人型ゾンビ(1) × 1匹 → 0匹

 刻印魔術(1)

 - 力/Uruz(1) × 1つ

 ※()は魂魄数上限および消費魂魄数。



 ■メイノミヤ・メイラ

【探索者ランク】

 D級探索者

【ジョブクラス】

《一般人Lv6→7》《屍鬼姫Lv1》

【通常スキル】

「体術2」「歌唱1」「舞踊1」「演奏2」

「裁縫1」「筋力強化1」「熱源感知1」「刻印魔術1」


 ○魂魄消費数(35→40)

 使役魔獣(33→29)

 - 人型ゾンビ(1) × 22匹 → 20匹

 - 獣型ゾンビ(1) × 11匹 → 9匹

 魔道具(1)

 - ナックルダスター(1) × 1つ

 刻印魔術(1)

 - 力/Uruz(1) × 1つ

 ※()は魂魄数上限および消費魂魄数。

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