第二章

第49話 似た者同士


制服デートも無事終わり、家に帰ってきた


俺は少し恥ずかしくてドキドキしてたんだけど、隣の静琉はずっと楽しそうで、そんな姿を見ていると、俺達が同い年なら、彼女も言っていたように、こうやって学校でもいつも一緒にいられたんだなぁ、なんて思い、なんかちょっと寂しくなった


「蒼くん、どうしたの?」

「え?うん、大丈夫」

「嘘。もう…分かるんだからね?」


静琉には敵わないな


「うん。静琉が言ってたみたいに、同い年なら学校でもずっと一緒にいられたんだなぁ、って思っただけだよ」

「そっか。それで?寂しくなっちゃった?」


なんだ?心読めるのかな…?


嬉しそうに「よしよし」と頭を撫でてくれてるけど、それ…ちょっと好き…


いやいや、そうじゃなくて


こんなに綺麗で可愛くて、今も大学でよく告白されるみたいにも言ってたし、高校の時もモテたんだろうな…


やっぱり…彼氏もいたのかな……


「ん?どしたの?」

「どうもしないよ…」

「もう!また嘘ついてるね?」


これ…嫉妬…なのかな…


「ついてないって」

「はいはい」


なんか「分かってます」みたいな顔で見られると、さっき考えてたことも重なって、ちょっとイラッとする


「もういいってば」


それは、思ってた以上に冷たい語気だった


「え…」

「え?」

「…ごめん…」

「え?なにが…?」

「蒼くん…怒ってる…」

「いや、怒ってるわけじゃ…」


そう…


これは、俺が勝手に…いたかどうかも分からない、高校時代の静琉の彼氏に嫉妬しただけなんだ


こう整理してみたら、俺って恥ずかしいな…

というか情けなくなってしまう


でも、静琉は悲しそうにシュン…としてしまった


あ…そんなつもりじゃなかったのに…


「ごめん、そうじゃないんだ」


もう、静琉を悲しませないって決めてたじゃないか


「実は…」と、俺はさっきまで頭の中で考えていたことを静琉に伝え、謝った


「…ごめんよ」

「蒼くん…」


嫌われたらどうしよう…


もし「別れよう」なんて言われたら…

ああ…どうしよう…

もう…静琉がいない日常なんて…

もう今の俺には、そんなの無理だよ…


「そんなに心配?」

「え…」

「私のこと、そんなに心配?」

「う、うん…」

「信用されてないのかな?」

「違うよ!そうじゃなくて…」

「うん、分かってるよ」


彼女は優しく俺に微笑みかけ、続ける


「私と同じだね」

「え?」

「私もね、蒼くんのこと心配なんだ」

「そうなの?」

「当たり前でしょ?もう一日中、監視しときたいくらいだよ」

「え…」

「登下校で他の女に狙われないか、クラスで女共に色目使われないか、本当に…本当にいつも心配で気が気でないんだけど」


あ…ちょっと目が虚ろに…


「だいたい、ちょっと自覚なさすぎだよ」

「え?なんの?」

「蒼くんは私のことばっかり言うけど、自分だって大概なんだよ?」

「え…ごめん、なにが大概なの?」


ムギュっと両頬を手で挟まれ、なぜかキスされる。しかも、軽く噛み付いてる感があって普通に痛い


「ちょ…ちょっと!痛いんだけど」

「…この顔でよくそんなこと言えたね」

「いや、だから、なんの話なんだよ!」


静琉はキッ、と睨んで言った


「蒼くんはめちゃくちゃカッコいいんだよ。だから私は心配なのに…全く…」

「は?」

「ほら、その顔。無自覚だよね」

「何言ってんだよ!静琉なんて綺麗でしかも可愛いじゃないか!よく告白されるとか言ってたし、こっちが心配になるだろ!」

「は?ちょっと何言ってんの?そんなの受けるわけないでしょ!それに私なんて付き合ったの、蒼くんが初めてなんだからね!」

「俺だってそうだよ!」

「じゃあいいじゃない!」


あれ?なんで喧嘩になったんだ…?


「うん…いいと思う」

「ん、ならいい」



「うんうん」と納得した様子の静琉を見ながら、俺はなんとなく、俺達は似た者同士なんじゃないだろうかと思いつつ、彼女が言った

付き合ったのは俺が初めてだという言葉に、

嬉しくならないはずがなかった






……………………………………………


第二章、開幕です。


ここから蒼介くんと静琉さんの甘々ラブラブ生活がスタートすればいいのですが…



あと、タイトルを新章スタートを機に変更することにしました。すみません…

新しいタイトルは「速水さんは大丈夫じゃない」です。

なんとなくこっちの方が、私はしっくりしたもので…


それでは、これから先もどうぞよろしくお願いします (o_ _)o





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