第37話 また会えたら
いつだったか
そう。確か、俺が小学一年生で、やっと小学校での、新しい環境にもそろそろ慣れてきたというくらいの時だったと思う
母さんが顔色を変え、いつもの優しい笑顔じゃなくて、怒りと悲しみに満ちた、そんな表情で告げられた
「蒼?転校することになったから」
「え?なんで?どうしたの?」
「…うん、ちょっとね……」
「おしごと?」
「……そうね…」
それから、父さんと、顔を腫らして服もよれよれになった兄さんが帰ってきた
「え…おとうさん?…おにいちゃん……?」
「蒼。今の学校は明日でお終いになるんだ」
「おかあさんがてんこう、って」
「ごめんな。でも、お父さんもお母さんも、お兄ちゃんもみんな、みんな一緒にいるから。これからも楽しく暮らそうな」
「うん…」
翌日、俺は仲の良かった友達に転校することを伝えた。
「え、そんな…じゃあ、もう会えない?」
「わからないけど、きっと会えるよ」
「そうすけくん、これあげるよ」
「え!これ、だいくんがだいじにしてたカードじゃん。こんなのもらえないよ」
「おれたちのこと、わすれるなよ」
「うん…もちろん!」
「そうすけくん…」
「□△ちゃん…また会えるよ、ね?」
「うん…」
「また、あそぼ?ね?やくそくだよ」
「じゃあ、△○□✕○ってやくそくして?」
「うん!」
「じゃあ、みんな!またね!!」
もうけっこう時間も経ったから、細かくは覚えてなかったりするけど、俺はこうして友達にお別れを告げたのだった。
その後、離れた街に引っ越した俺たち家族は、それから新しい生活をはじめることになった。
でも、生まれ育った町から急に知らない土地にやって来て、そこでもそれまで通りにやっていけるほど、俺は器用じゃなかった。
それまでいた小学校は、それこそ幼稚園の頃からみんなが友達で、自分で意識して友達作りなんかしたことがなかった。
新しく転入した小学校ではそういうわけにはもちろんいかない。でも、俺は自分から打ち解ける事がなかなか出来ず、結果、高校生になった今でも、それをそのまま引きずってる感じなのだ
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「よく見てみて。どう?」
「………」
画像を見せられ、思考を放棄しつつある俺
茫然自失となり、膝を着いてしまった
「彼女は他所で他の男と楽しんでるんだよ。あなたを放っておいてね?」
「そんなこと……」
「緋村くん?私なら…私ならそんなこと、絶対にしない。他の男なんか見ない。あなただけを…蒼介くんだけを見てるわ」
「………」
「せっかくまた会えたんだもの。絶対に私は裏切らないし、そんなふうに悲しませるようなことなんてしないわ」
「え…?」
ふと顔を上げると、相田さんは俺の頬に優しく手を触れ、知らない間に流れていた涙を、そっと拭ってくれた
その表情は既視感のある懐かしいもので、どこかで見たことがあるのは間違いないんだけど、でも、今の俺にはそれ以上頭を酷使するようなことは出来ず、画像を見せられたショックと、急に優しく接する相田さんへの困惑で、正にフリーズ寸前だった。
「それに、約束したもんね?」
「え…?」
「うふふ…また会えたらお嫁さんにしてくれるって」
え?
『みおちゃん…また会えるよ、ね?』
『うん…』
『また、あそぼ?ね?やくそくだよ』
『じゃあ、また会えたら、およめさんにしてくれるってやくそくして?』
『うん!』
あ…え?…相田さんが……みおちゃん…?
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