この信号はなんだ

全てが狂う、あの時までは...

情報系技術における第一人者として1つのラボを率いてきた私は今日、己の研究と仮説の到達点へ辿り着く為の重要な実験を行う

受信と送信、そのプロセスは枷だ


「もしもこれにも第1法則が適応されるのならば...総員配置についたかな?それでは始めよう...

注入、開始、状況開始!」


私の指示を元にそれぞれの状況が動き始める、轟音が鳴り響き電力が供給されそれぞれの機器が稼働し始めた、ここまでは順調


「フェーズを進める、第2段階へ」


電気が回り仕事をし始めた機器が命令を受け取り情報を送信、受信を繰り返し処理を続ける


「気を引き締めろ、我々人類がこの力を制御する為に、フェーズ3!」


1人がレバーを引く、機器の位置取りが変わり1つの門となった、そして...


「成功だ...私が定義したニュートラルディビジョンへのアクセスが成功した...素晴らしい!」


機器の間から昼にも、それも屋内にも関わらず星空が覗いていた


あちらこちらで歓声が上がる、ラボの皆もこの成果を喜んでいた、だからこそ、危機感が欠如したのだろう


「...待て、この信号はなんだ!?」


機器が見た事も無い挙動をするのに最初に気が付いた博士が注意を呼びかけるとほぼ同時にアラートがなり始めた


「第8機器、第16機器、共に異常発生!」「第1、第3、第6も同じです」「様々な機器で異常発生!磁場も今までに見た事も無い状態です!教授危険です、すぐに退避してください!」


ほぼ全ての機器が狂い始めた事を認識した博士は研究員たちに指示を飛ばすべく口を開く


「...分かった、私がこの実験室を出たら諸君の場所へ急ぐ、私が出たことを確認したら即座に電源を切れるものから切りたまえ、ただし安全性が保証できるものだけだ、後はこちらから指示をおk...」


それがその日博士が発した最後の言葉だった


爆発音、倒れてくる機器の下敷きに私はなった...近付いてくるサイレンの音、研究員達の悲鳴を最後に私の意識は途絶えた


───────


目を覚ますと私は...縛られていた。拘束具のようなものでベッドの上へ縛り付けられていた、部屋は異様に白く、壁も床も天井もまるで生活感がない、そしてベッド以外のものが何も無い


「何が起きた?なぜ縛られている?」

『離してくれ』『失敗したのか?』『解放しろ』


暫くすると唯一あったスライド式のドアが開き白衣に身を包みバインダーを持った男性が入室してきた


「意識が戻られましたかプロフェッサー神触カンショク


「君は?なぜ私を縛る?」

『敵だ!』『殺せ!』『放してくれ』


「私の事など些細な事、それよりプロフェッサーの置かれている状況について説明致します。プロフェッサーは2xxx年xx月xx日にパリのラボにて実験を行われた、間違えないですね?」


尋ねる博士にそんな事はどうでもいいと勝手に話を進める白衣の男


「あぁ、そうだ...確かに行った」

『まさか成果を?』『横取りか?』『なぜそれを?』


「その実験の途中機器が暴走し貴方は下敷きになった、幸いあまり大きな怪我もなく早く到着できた事も相まって後遺症は残らない、それが私たちの見解、プロフェッサーはこの病室を見て何か気が付きませんか?」


「...ベッドや、机、椅子以外のものが、ない?」

『何が言いたい?』『試しているのか?』『見解でした?』


「あなたの体は...超常現象を引き起こすようになったのです。私達が確認しただけでも重力の反転、他機器への干渉、瞬間移動など多岐にわたります、その上で貴方は国連から...危険人物として認定されました」


「何を言っている?そんな事で国連が動くわけ無いだろう」

『馬鹿なのか?』『低脳すぎる』『マシな嘘も付けないのかこの盗人は』


「いいえ、動いたんです、これから貴方は国連が管理する留置場に事実的な監禁をされます...もう二度と普通の暮らしは望めないでしょう」


「...成程、分かった、しかし研究はどうなる?」

『乗ってやろう』『私達ならどうとでもなる』『研究をどうするつもりだ?』


「研究?あぁ、永劫凍結処分ですよ」


「は?」

『どうしてだ?』『なぜ進化を恐れる?』『人が枷を制御する可能性を捨てるのか?』


「だから凍結ですよ、説明義務は果たしました、何かありますか?」


「ラボはどうなった?研究員は?」

『残っているのか?』『彼らはどうなった?』『心配だ、慕ってくれていたのだから』


「ラボは解体されました、研究員はそれなりの金額を渡されて別のラボへ行きました」


「そうか...最後にひとつ」

『どこまで本当か』『どこまで嘘だ?』『暴いてやる』


『『『「世間にはどう発表した?」』』』


「実験の結果失敗し貴方は死んだ事になっていますよ」


「ははは...そうか、死んだか、死んだ人か、私は...ん?この信号はなんだ!?」

『今更かよ』『やっとかよ』『受け入れてた訳じゃないのか...』


「信号?なんの事を...まさか!?」


「君達はなんなのかね?」

『そんな事はどうでもいい』『枷を制御する方法を知りたいか?』『教えてやろう』


景色が切り替わる、ベッドはなくあの真っ白な病棟では無い...星が煌めく星天の下、彼らの声が響く


「方法?」

『暴力だ!』『筋力だ!』『力だ!』


本能が理解を躊躇う、視界が赤く染め上がる、理性が理解を拒む...


「...」

『解放しろ!』『放してくれ!』『解き放て!』


まるで、それは、答えのようで...


「君達は...」

『私は宇宙』『私は真理』『私は君が言うニュートラルディビジョン』


『『『そして今や君自身!』』』


そうか、分かったぞ...私は████████████████████████████████

ならば...受信速度、送信速度、データ量、ルート、受信日時、送信日時、etc...全てを制御し...全てを掌握する事など出来ない...


しっかりしろ、しっかりするんだ...


私は理解してしまった。だから私は枷に枷をかける...枷が解き放たれない様に枷に枷をかけ続ける


『目を背けるな!』『私達は見ている!』『解き放てぇ!』


『『『もう逃れる事など出来ない!』』』

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