花が降る頃に
さしみん
第1話
花の降る頃に、私、花上紫一郎(はながみしいちろう)はこの大日本魔術研究学校に入学した。どうやらこの学校は、魔術士魔剣士育成学校の最高峰と言われる学校らしい。私は、校門にある桜の木に目もくれず待機場所である教室へ向かった。向かう途中、私の噂話が聞こえた。
「あの子が今年の首席で合格した人らしいよ。」「あああの子か。噂は聞いているよ。なんたって花という新しい剣術を使うらしいな。文献にも載っていないのに、本当に大丈夫なのか?」どうやら、私が使う花の剣術が珍しいと噂しているらしい。確かに、私が使う剣術は基本である「炎、水、樹、地、風、雷」とは違っていた。まあ私は、剣術を習い始めたときからこの剣術を使い、この剣術は私のアイデンティティとも思っていたから、そのような戯言には一切気にしなかった。
待機から入学式の会場に向かった。私は気丈であることを示す為に、用意してあった椅子に堂々とした態度で座った。実を言うと、一抹の不安が無かったわけではない。やっぱり、首席の役割である、新入生代表の挨拶は気が重たかった。だか、(こんなことでこんなことで怖気付いては駄目だ)と自分を鼓舞し、何とか乗り切ろうとした。
入学式が始まった。予想はしていたが、校長の話が長ったらしく面白くない。要点を纏めると、君たちはこの大日本帝国の至宝だ。ここで6年間魔術や剣術に励み、日本を担ってくれと言っていた。魔術士や、魔剣士はこの国の主力だ。将来を担うのは当然だろう。私は生意気かもしれないが、心の中でそう思った。
やっと私の出番が来たようだ。緊張しすぎて何を言ったのかはあまりよく覚えてない。ただ、しっかりと自分の役目を終えられた安堵感と、堂々と、名門校の首席で入学した者に相応しい態度を示せたのかどうかわからないという不安が、心を占めた。
入学式は、この後何もトラブルが起きずに終わった。教室に戻ると、担任の先生から、自己紹介と、簡単な話があった。この先生は結構凄いらしい。日本は黒魔というものの脅威に晒されているが、それの上から3番目の強さである「暗黒」というものをひとりで倒したらしい。強い魔術士や魔剣士が数人がかりで倒すのだが、ひとりで倒したのだから、それは結構すごいことだ。私は良い先生に恵まれたと思い心を躍らせた。
入学式が終わったあと、ある人から声をかけられた。名前は山田良輔らしい。私のことが気になって話しかけたらしい。私は首席だから当然だろう。どうやら樹の剣術を使うらしい。その子が
「何を使って戦うの?」と聞いてきたので、私は
「花の剣術を使って戦うんだ」
と答えた。彼はキョトンとした。文献にも載っていない剣術だから無理もないだろう。
「花の剣術...?なにそれ?是非見せてほしい!」
と目を輝かせて言ったが、私は冷淡かもしれないが、
「この後修行があるから無理」
と答えた。彼はそのことを素直に受け入れ、別れの挨拶をした。私も挨拶をして、修行に向かった。
こうして、花上紫一郎は、大日本魔術研究学校の門を叩いたのであった。
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