君には話せない

村部

0 前略

 こうして改まって手紙を書くということもないので、どんな風に書きだしたものか、迷ってしまいます。拙いとは思いますが、ご容赦ください。といっても、君も私と同じように、こんな風に手紙を書くことなんてないと思うから、気楽にいきたいと思います。きっとこれが、君に宛てる最後の手紙になるのでしょうし。

 ああ、こうやって思いを言葉にしようとすると、こんなにも気恥ずかしいものかとうろたえます。いつもなら、あんなにスラスラ、とはいかなくても、こんなに悩むことなく書けるのにと驚くばかりです。君が目の前にいないからでしょうか。

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