第6話 戦いの結末

 ララクがスキル確認している間に、ケルベアスの首は元通りになっていた。


「ララク! また突進がくるぞ!」


 ガッディアの言う通り、ケルベアスは再び突進しようとしている。しかし、赤いオーラは出ていないのでスキルではない通常攻撃のようだ。

 おそらく、【サーチング】で自分のスキルがバレたことを知っているからだろう。

 脳が3つあるので、これぐらいは頭が回るようだ。


「大丈夫ですよ」


 ケルベアスが走り始めようとした瞬間、その脚が地面から離れなくなったのだ。前に進もうと思っても、何かの抵抗を受けて前進できない。


「グルルゥゥゥ」


 ケルベアスの4本脚には、紫色の鎖が大量に巻きつけられていた。その鎖は地面から植物のように生えており、標的を捉えて離さない。

 これもまた、ララクが獲得したスキルの1つだ。


「【ポイズンチェイン】便利だなぁ、これ」


 これは、魔毒使い・キンディンスと鉄鎖てっさのアルバリオのスキルが組み合わさって出来たものだ。


【ポイズンチェイン】

 獲得条件……【クイックポイズン】【チェインホールド】を所持。


 効果……即効性の毒が塗られた鎖を生成し、相手を拘束することが出来る。



 効果説明通り、この鎖には体を蝕む毒が付着している。しかも、即効性が高く相手の動きを鈍くする。

 そのため、鎖で相手を拘束しやすくできるので、相性が良かった。


「グルルルルゥゥ」


 唸るケルベアス。4本の足が、つま先から徐々に紫色に変色していく。


 ケルベアスは何度も脚を持ち上げて振り解こうとするが、鎖の強度は高かった。


 当分は身動きが出来なさそうなことを確認をすると、ララクはさらに追撃することにしたようだ。


「まずは【空中浮遊】」


 ララクの体がふわっと浮き始める。レニナが使用していたスキルだ。


「それと【分身】」


 その後、ララクの体が分裂して3人に増えていく。

 増えた2人も、創成したゴールデンソードを構えており、さらに宙に浮いている。


「ラ、ララクが増えやがった!」


 次々、スキルを組み合わせていくその姿に、デフェロットは目を疑う。

 【分身】のスキルは、瞬影忍者しゅんえいにんじゃ・カケルが持つ希少スキルだ。なので、聞いたことはあっても実際に目にするのは初めてだったのだろう。


「よし、行くよ。ボクたち!」


 ララクと分身体たちはケルベアスを目指して空を飛行していく。

 そして彼らは、それぞれケルベアスの3つある頭の上空で停空した。


「よし、【ウィンドスラッシュ】だ」


 今度は、確実に首を切り落とすために、【エアスラッシュ】ではなく、その複合版を発動する。


 【ウィンドスラッシュ】

 獲得条件……【ウィンドカッター】【エアスラッシュ】を所持。

 効果……剣の斬撃を実体化させて放つことが出来る。さらに、風の効果を付与させる。このスキルの威力は、剣による攻撃の威力によっても変化する。


 スキルを発動するために、3人のララクは剣を振り上げる。


 しかし、頭上に移動してきたララクを見て、森の主がただ黙って見ているはずもなかった。まだ、鎖は解けていないが、脚以外ならば問題なく動かせる。

 そしてケルベアスには、この状態でも発動できるスキルがあった。


「グルォォォォォォォォォォ!!」


 ケルベアスは3つの口で大量に空気を吸い込む。すると、異常に肺が膨張し始める。それは外からでも分かるほどだ。

 そしてその後、3頭同時に強力な咆哮を放った。


 これがケルベアスのみが所持しているスキル【ケルベアスの咆哮】である。シンプルなものだが、この巨体でしかも3つ同時に繰り出されるため、音と衝撃波は凄まじかった。


「っく、ぐぅぅ」


 頭の上にいたララクたちは、それをもろに食らってしまう。【空中浮遊】で、なんとか吹っ飛ばされないように、とどまり続けようとする。

 しかし、台風に連れ去られるかのように、ララクたちの体は後ろへと下がっていく。


「だったら、【聴覚保護】! さらに【ウェイトアップ】」


 このままでは【ウィンドスラッシュ】を発動できないと思い、それを補助するためのスキルを発動する。


 【ウェイトアップ】を使うことで、ララクたちの体は吹っ飛ばされるどころか、下へと重力に引っ張られていく。


 そしてその勢いを使って、【ウィンドスラッシュ】を発動することに成功する。


「はぁぁぁ、はぁ!」


 ララク、そして分身体2人はほぼ同時に風の力が加わった斬撃を放つ。

 風力によって、斬撃は加速していく。

 さらに、【ウィンドスラッシュ】はこれを発動するために行う攻撃の剣速が速いほど、攻撃力とスピードがあがっていく。


 パッシブスキル【剣適正】により剣速が、さらに【ウェイトアップ】で重さが増えたことにより振り下ろすスピードが上昇していた。


 咆哮に抗いながら出したとはいえ、その効果は絶大だった。


 放たれた3つの斬撃は、綺麗な切り口でケルベアスの頭全てを切断して見せた。

 大量の黒血が森に流れていった。

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