陶酔
最近お疲れみたいだね。まあちょっと座りなよ。今日は僕の奢りだ、好きなだけ飲んだり食べたりしていい。
他にお客さんもいないから。特別だよ。
そうだ、せっかくだから新作を味見してほしいな。なにって、カクテル以外になにがあるの。忙しすぎて僕の職業忘れちゃった?
ずっと試作を重ねててさ、ようやく人に出せるものが出来たんだ。気に入ってもらえると良いな。
良かった。美味しい? さっきまでのしかめ面が嘘みたいだね。自分が今どれだけふにゃふにゃの顔してるか、分かってないでしょう。
おかわりが欲しければ言って。いくらでも作ってあげる。僕の奢りだって、さっきも言ったでしょ。気にしなくていいから。
ただ、お代の代わりに聞きたいことがあって。
僕の趣味はガーデニングって話したことあるよね。庭でハーブとか育ててるんだ。最近は薬になりそうな草にも手を出し始めてさ。
ところで「毒薬変じて薬となる」って言葉聞いたことある? ――ああ、もうほとんど聞こえてないかな。続けるけど。
逆に言えば、「薬も毒になる」って事でしょ。そのカクテルでそれを試してみたんだ。大量に入れたら幻覚が見えるブツらしいんだけど、どんな景色が見えるのか気になって。
ふにゃふにゃどころか、ドロドロの顔だね。そんなに素晴らしいモノが見えてるのかな。現実なんか忘れちゃったって感じ。
僕の前にいるときくらい、現実を捨て去ってほしいからさ。効果は抜群だね。毒見してくれて助かったよ、ありがとう。
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