オーバーライスター
もえがみ
悲劇のプロローグ
辺りが生臭い。眼前から漂ってくるのは醜悪な光景。
細道にも関わらず、こんな残酷な物を見るのは初めてだ。俺の目の前に倒れるのは首のなくなった女性。見覚えのある制服を捉えると思わず瞠目した。
「……ッ!? さ……おり?」
咄嗟に出てきた名前を気づけば口にしていた。……それは先ほどまで一緒にいた馴染みである俺の親友の姿だった。
数時間前までの記憶がフラッシュバックするように脳裏を過る。
「あぁ……。あぁ……」
叫喚の声をあげる。
頭の処理が追いつかないなんだこれは。俺は悪い夢でも見ているのだろうか。
考える由もなく、気がつけば彼女の死体へ歩み寄っていた。
揺すりをかけてみるが反応無し。
「彩折! しっかりしろ彩折!」
聞こえるはずがない。それは当然だ彼女はもう既に死んでいるんだから。……そう分かってはいる考えなくても分かっている。だが俺は実感が持てなかったのだ彼女が本当に死んだという事実に。
もしかしたら生きているのかもしれない。そんな細やかな希望を抱きながら。
彼女の体からは大量の血液が血だまりを作るように広がっていく。その広がる血を俺は呆然と眺めるばかりで。
「これが事実だなんて俺は絶対に認めない。認めてたまるか」
認めたくはない。……だってお前さっきまであんなに嬉しそうに笑っていたじゃないか。……こんな唐突な別れなんてあんまりだよ。
「……?」
するとポケットから急にスマホが鳴り出す。
「なんだよ! こんなときに!」
苛立ちながら振動音の鳴るスマホを取り出したすると。
「!? なんだ……辺りが真っ白に」
視界が徐々に真っ白になっていく。それは辺りに染みついている色が徐々にこぼれ落ちていくように。壁際の色が剥げ、空の色、建物、彩折の色とつくもの全てが。……何もかもの色という物全てがなくなっていく。
俺の意識は遠ざかり世界から切り離された。
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