五仕旗 Media=II Generation

旋架

第1章 PARSKR II 編

第1話 鍛凍龍

第1話 鍛凍龍 Part1

<鉱山の国>


「ねぇ、鉱山の国ってこんなに広かったっけ?

もう疲れた。

アブゼリード、しばらく休もうよ」


「そんなことを言っていては、いつまでたっても先に進めないぞ」


流導類清るどうるきよ

二十代前半のその青年は、"アブゼリード"と呼ばれる悪魔のような龍と旅をしていた。


「この辺は君も慣れているだろう?

弱音ばかり吐くな」


二人は薄暗い洞窟の中をひたすら歩いていた。

先が見えない分、気が滅入る。


「非常用の扉とかあるだろ、普通。

ここで迷ったらどうするんだよ」


「ここは一本道だから、そんなものはないのではないか?」


「一本道だからって安全だとは限らねぇだろ。

現に俺が、こうやって非常事態なんだから」


「文句ならこの洞窟を設計した者にでも言ってくれ」


「そいつ誰だよ?」


「知らん」


類清はなんとか足を動かした。


「それよりも類清。

せめて鉱山の国の地図は覚えておくように言っておいたはずだ」


「ちゃんと覚えたよ。

忘れちゃっただけじゃん!」


「それが問題だと言っているのだ。

私がもしいなくなったら、君はこの先どうするというのだ!」


「その時はその時で、どうにかするからいいんだよ!」


「まったく、言い訳だけはいつも立派だな。

"大切なものは失った時に、初めてその大切さに気づく"というだろう。

失ってからでは遅いこともある」


「はいはい。

じゃあこれからも俺のそばにいてくださいよ」


**********


<洞窟の奥>


洞窟の奥にはある男が待ち構えていた。


「おい!

お前か! ここのボスってのは!」


「何だお前達は?

ああ、王座を狙った挑戦者か。

最近、つまらない奴ばかりで退屈していたところだ」


男が聞き返す。


「大体ここのボスは元々俺が…」


「それは嘘だろ。

君は…」


「細かいことはどうでもいいんだよ!

そんなことより俺と勝負だ!」


「勝手な奴だ…」


青年と龍のやり取りに男がイライラする。


「何だ!

戦うのか戦わないのか!」


「戦うに決まってんだろ!

起動聳スターターカク、オン!」


類清は腰につけたデッキケースに触れ、起動聳スターターカクに信号を送った。


起動聳スターターカクは世界のあらゆるところに立つ、柱のような建物。

五仕旗ごしきによる勝負のシステム管理や計算を行う。

モンスターによる攻撃を調整してやわらげる力もあるため、人々の安全を確保する役割もある。

はるか昔は、五仕旗のゲーム中は威力調整機能が弱まってしまう難点があったが、技術の発達でこの時代にはその点も改善された。

ゲーム内、ゲーム外を問わず、モンスターによる攻撃は大幅に削減可能になることで、モンスターの襲撃による事故が減少。

子どもで、ゲーム中におけるモンスターの攻撃で起こる風などを怖がる者も、この機能改善により、五仕旗をプレイしやすくなったのである。

反面、プロの大会やショーなどでは、威力調整機能を意図的に調節することで、演出の一環として活用するケースもあった。


「俺はマイン。

鉱山の国の王だ」


Centralセントラル Sortソート:Enイー、流導類清!」


鍛凍龍かこおりゅう アブゼリード!」


「お前は名乗らなくてもいいだろ」


「別にいいだろう。私も君とともにいるのだから」


「五仕旗…」


Media=II Generationメディア・ジェネレーション!」

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