第31話 婆ちゃんズの参戦
嬉しいやら、恥ずかしいやら、感情がこんがらがっている時、
「ただいまぁ!あれ?お兄たち来てたんだ?何大騒ぎしてんの?」
楓が学校から帰ってきた。
学校の図書室で受験に向け勉強してくるから、帰宅は少し遅めなのだ。
俺の時とは色んな意味で違うから、みんな安心している事だろう。
しかし、楓が帰ってきたところで本当に急に冷静になってしまった。
周りが見えてきた事で恥ずかしさが倍増である。
「それでなんかいいことあったの?
さっきそこで婆ちゃんとババがニヤニヤしながらスマホ眺めてたし?」
なん?居たのか!?
完全に油断していた!見られた上に動画まで撮られていた可能性が高い。
もう本当に恥ずか死ぬ…。
俺が倒れそうになっていると、萌香が駆け寄ってきた。そして俺に抱きつきながら楓に説明している。
「というわけで、ようやく両想いになることができました。
もう幸せすぎて溶けそうですよぉ。」
顔を惚けさせて言っているから、…つい、思わず見惚れてしまう。
い、いかん変なことを考えるな!俺!
「ウワァ、お兄。おめでとう!と言いたいけどその顔はダメだと思うよ。いつものキリッとした顔の方が好きだな。私は?」
何故か、楓はほっぺたを膨らませていた。
「ありがとう?でもあんまり嬉しくなさそうな?なんかしたか、俺?」
「なんもないし、知らないよ。やっと仲直りしたからこれから一緒に色んなところに行こうと思ってたのに。彼女作っちゃててさ!
まぁ、萌香ちゃんならいいけど…。」
楓は俺が彼女を作ったから怒ってるのか?
楓も萌香とは仲良くしてたと思っていたが?
そこにじいちゃん達からヤジが入る。
「萌はモテモテだな!羨ましいわい!ワハハ」
「ホントだな、楓ちゃんを怒らせるなよ?萌。」
「お前もやるなぁ?」
何言ってんだ?この耄碌ジジイどもは?
「もうっ!おじいちゃんたちはだまっててよ!!これは私たちの問題なんです!!」
楓の大きな声に驚いた爺さんズは、
「「「はいっ!失礼しました!!」」」
と言って部屋から出て行ってしまった。
代わりに婆ちゃん達が入ってきた、そして、楓に釘を刺している。
「楓もそんなに怒らないの、いいことじゃない。萌が、こんなに可愛い顔してるのを私は、久しぶりに見たよ。」
と紅葉婆ちゃんが言い、
「そうですよ、楓。兄の成長を喜ぶところですよ。別にもう、以前のように貴女を蔑ろにするようなことはしないでしょ?ねぇ萌?」
雅子婆ちゃんが俺に尋ねてきた。
あぁ、楓にもずいぶん寂しい思いさせたからなぁ。そのことか。
「俺も別に楓のことを遠ざける理由もないし。そもそも、楓と遊ぶのも嫌じゃないぞ?」
すると、萌香も
「楓ちゃんも一緒に遊びに行けばいいのですよ!私は、萌君のことを独り占めするつもりはありせんから」
と言い、楓も驚いている。
「萌香ちゃん、いいの!?私も一緒に遊びに行っても?」
楓が確認している。
妹なんだから別に気にしなくてもいいと思うんだが…。
頷いた萌香は、とてもきれいな笑顔で楓に、
「でもその代わり。恋人としては私が独り占めしてしまいますけどね?」
と、楓の方を向いて宣言?していた。
確かにきれいな笑顔なんだけど少し怖くなってきた俺は、二人の間に入ろうとする。
「あ、あのさ…」
だが、しかし、かぶせるように楓が口を挿む。
「大丈夫。兄としては私が独占するんだから、私だけのお兄なんだし?萌香ちゃんは気にしないでね?」
な、なんだ?二人の間でいったい何が起こっているんだ?!
二人のやり取りをじっと見ていた紅葉婆ちゃんが動いた。
そして二人のおでこに婆ちゃんのデコピンが炸裂した。
「「ぃっっだっ!!?」」
二人ともおでこを抑えてを受けしゃがみ込んでいる。
思いのほかダメージが大きいようだ。
そういえば、俺も小さい時にやられてたな。
「二人とも何言いあってるんだい?萌が困ってるじゃないか。萌香ちゃんは萌の事ささてくれるって言うならもう少し大人にならないとね?」
「はい、頑張ります。紅葉お婆様!」
「それから楓、さっきも言ったけど、萌はもう逃げやしないから安心しなさい。家族なんでしょ?だったら萌の事をもっと信用してあげなさい。」
「うん。お兄は、私のお兄だもんね。モチロン信頼してるよ?ムフフ」
楓は胸を張って言い返していた。
「楓も、もう少し大人にならないとね…。萌に嫌われてしまいますよ?」
と、雅子婆ちゃんから釘を刺されて「はぁい」と気のない返事をしてまた怒られていた。
それからは、バイトに向かう時間までみんなで談笑していた。
そして、消去をお願いしていたスマホの動画データは母さんに転送されていた…。(俺の知らないうちに萌香にも転送されていた。)
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