第29話 親友との相談
* * *
昼休み。
食堂には4人の男女が向かい合って座っていた。
「ごめんね萌香、せっかく二人で食事するチャンスだったのに、萌もめんどくさいことに巻き込んで。お爺ちゃんとクソ兄貴が訳のわからないこと言い出してさ。」
久美が、俺とモカに謝ってくる。
「久美、気にしなくて良いからね?
萌くんは絶対を譲らないけどねウフフ…。」
モカの笑顔が怖い。
目が笑ってない。これは早めに決着をつけないとヤバいかも、変に勘違いされるのはゴメンだ。ということで、俺から提案する。
「うちの爺さんたちがいるところで話すのが良いかな?今日も母さんの実家に鴨川の会長も来ているはずだし。」
こんな風に言うと寄合所みたいでいやだな…。
「お爺ちゃんまたあんたの家に入り浸ってるの!?お婆ちゃんに言いつけてやろ…」
「この際だから、今日行くか?キャンプまでにはスッキリさせたいだろ?どうせ真司兄さんは爺さんに担がれてるだけだろうし。」
「私たちはありがたいけど。時間的にバイトは大丈夫なの?クソ兄貴のことは由紀姉さんに頼んであるから大丈夫だし!フハハ…!」
久美さん、笑い方が閣下になってますが…。
会長も大変だな。自分で蒔いた種なんだから仕方ないか?
真司兄さんの事は、先輩に頼んであるなら心配ないかな。
真司兄さんさんもつく方を間違えたね。
今日のバイトは向こうの都合で、少し遅れて入ることになってるから問題ない。
ランチの後に店舗に定期清掃が入ると言っていた。定期清掃は、業社さんが入るので、俺たちがいると邪魔になるのだ。
「バイトの時間は、気にしなくてもいいよ。今日は向こうの都合でシフトの入りが遅いんだ。モカも今日シフトに入ってるからな?」
「それなら、良いんだけどね。こんなことで萌に迷惑かけたくないからさ。」
久美が俺の心配をしているのかそんなことを言ってきた…。
仁も少し不安そうな顔をしていた。
そこで、二人には気にしないで欲しいと伝える。むしろこれまで散々俺が迷惑をかけたことを考えれば何でもないしな。
彼女は彼女で俺に、
「今日は、ホールの実務みたいなので緊張します。萌君は厨房の中にいるから離れてしまいますし。」
可愛いことを言ってくれる。でも、心配ないぞ!
「連休の中日だからそんなに混まないと思うよ。今夜は、マスターの奥さんも出てくるみたいだし心配しなくても大丈夫。奥には俺もいるんだから変な奴が声かけてきたら直ぐに呼ぶんだぞ。」
俺の言葉を聞いたモカは、顔を赤くしながら胸の前で手をグーにして「頑張ります!」と宣言していた。
可愛い…。
いや、それは置いといて、俺は二人に大事なことを確認する。
「お前らは付き合ったのをみんなに公表したのか?二人ともに結構おモテになってただろ?広めないとまた告られたりしない?揉めたりしたらめんどくさいだろ?」
仁がその辺は大丈夫だという。
そして久美から、
「クラスは違うけど、怜雄におしえたから直ぐに広まるわよ。あいつスピーカーだから広められるのも早いでしょ?別に隠すつもりもないって言ってあるしね。」
怜雄への信頼が別の意味で厚い。
そして、ある意味潔いな…。
とりあえず、各々授業終わったら母さんの実家に集合することになった。
俺とモカは、モカのマンションで合流してからバイクで鈴木の実家に向かうことにした。
モカは着替える必要があるからな。
制服のまま、バイクには乗せられない。女子が制服でバイクなんてもってのほかだ!
見たやつらの眼を片っ端からつぶしに行かなきゃならんからな…。
しかし、こんなことならあの時に伝えておくべきだっかもと、今更ながら少し後悔している俺であった。
さきほど、仁にあることを相談していた。結果的にそれで覚悟が決まり、実行を決意をする。
* * *
俺も一度自宅に戻り、私服に着替えた。
そして、父さんの仏壇の前で手を合わせながら俺は一種の決意表明をした。
すると、仏壇から父さんの声で【頑張って来い!】と言われたような。いや、本当に言われたのかもしれないな。
さて、気合も入った事だしモカを迎えにいこう!
予定通りマンションでモカと合流した。
モカの私服はいつも通り綺麗だった。
何を着ても似合う彼女はまるでモデルのようだ。
2人を乗せた
* * *
俺たちが、家につくと久美と仁は、敷地内にあるガレージにバイクを停めて俺たちの到着を待っていたようだ。
そしてガレージには、やはりというかいつも通りというか鴨川会長の
久美は会長のバイクを横目にクラッチワイヤーにKRE●-556を吹き込んでやろうかと、悪魔のような顔で言っていたが貴重なバイクに変ないたずらをしないよう注意する。
知っている人には当たり前の話だけれど、KRE●556の用途としては金属部分の防錆・潤滑・洗浄・防湿である。サラサラしていて浸透性は優れているが、油膜保持力はとても低く、また揮発してしまうので持続性もあまりない。つまるところ、専用のグリスをすぐに注入してあげないとワイヤーがギシギシになって使い物にならなくなって下手をすれば事故につながってしまうのである。詰まる処、ある意味ものすごく危ない行為ということである。(当たり前だけど専用の潤滑剤を使うのが正解なのである。)
やられても鴨川会長ならすぐに気が付きそうではあるが、溺愛している孫にこんなことされたら…、泣くだろうな。
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