『風天』-失恋率100%のイケメンヤクザ伝説-

麻美拓海

第1話「若親分は今日も不在」飛騨高山編①

○東京・風天組の事務所


ガラスが割れ、男たちの怒号に続き銃声が響く。

風天組の若い衆「カ、カチコミ(敵対する組への襲撃)じゃぁ」

一気になだれ込んでくる亀田組の男達‥。


○同・奥の部屋


椅子からゆっくり立ち上がる若頭(組長に次ぐNo2の役職)の鮫島。その背後に、風天組<ふうてんぐみ>と書かれた金文字の代紋(組のシンボルマーク)

が見える。


鮫島「ほぉ、風天組に逆らうたぁ上等だ。どこのアホどもや?」


鮫島を囲み「ちょいと絞めてやりますか?」と言う幹部達に、日本刀を抜き

ながら「ぶち殺したれ」と凄む鮫島。幹部達、一斉に懐から拳銃を出す。

鮫島、舎弟頭(兄弟分トップの役職)の蝶野に「若に連絡しとけや」と言うと、部屋の扉を足蹴りにし、日本刀を振りかざしながら出て行く。その後に続く幹部達。蝶野、携帯を取り出し短縮ボタンを押す。その背後で、激しさを増す怒号と

銃声‥。


○岐阜県高山市・中橋


のんびりとした古風な町並み。


宮川にかかる中橋。その朱色の欄干にもたれ、飛騨名物のみたらし団子を頬張る

男がいる。風間天道 <かざま てんどう>である。

一見ディーン・フジオカ似のイケメン。だが、ストライプの入ったスリーピースのスーツは、ちょいワルと言うよりヤクザにしか見えない(ヤクザだけど)


天道「ええ天気じゃのう」

            

川のせせらぎに、小さく携帯の音が重なる。天道、団子を串ごと口に咥え携帯を耳にあてる。受話器から怒号と拳銃の音。

蝶野の声「若、今どこです?亀田組の奴らが‥」

天道「ンガンゴ、ウガガガ」

蝶野の声「ん?‥若??」

天道「ギギガガ、ギーギギ」

天道、何かを言うが団子を咥えているため、モゴモゴと意味がわからない。

蝶野の声「若‥何です?若!」

天道、面倒くさそうに携帯を切り懐にしまうと、団子の串を口から離し、快晴の空に向かってつぶやく。


天道「気分を壊すな、ちゅうてるんや」


○タイトル in 『風天』-失恋率100%のイケメンヤクザ伝説-

  

登場人物 


風間天道 (28) 風天組 組長

鮫島(38) 風天組 若頭

蝶野(33) 風天組 舎弟頭

いずみ(27) 小料理屋の女将

竜太(8) いずみの一人息子

八千代(8) 竜太の同級生

銀次(29) いずみのヒモ

袴田(54) いずみの常連客

安治川靖(62) 安治川組 組長

平城(45) 安治川組 若頭

京本(38) 安治川組 若頭補佐

佐山(31) 安治川組 舎弟頭

           

            

            



            

 

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