ギルドアカデミーを追放された俺は、呪い耐性で最強傭兵に成り上がる。潰れそうだから復学しろと言われても、もう遅い。

水間ノボル@『序盤でボコられるクズ悪役貴

第1話 ギルドアカデミーを追放

 「ここはお前のような貧乏人がいる場所じゃねえんだよ! さっさとここを辞めろ!」


「そうよ! あんたと私たちは住む世界が違うの!貧乏人は大人しく派遣ギルド要員になりなさい!」


 昼休み。クラスメイトたちが俺を責め立てた。

 ここはギルドアカデミーの教室だ。

 冒険者の街「ビルトタウン」にある巨大独占ギルド「ヨツビシ・ギルド」の正ギルド社員候補生が通う学校だ。


「ミゲル・アルバレスくん。ここは君の居場所じゃない。君のいるべき場所は、スラム街の痰壷の中がふさわしい。一生、ゴキブリのように地べたを這い回って生きてくれないか?」


 ギルドアカデミーの生徒会長、エンリケ・モラレスが言った。

 こいつはSランク勇者候補生であり、このアカデミーの理事長の息子で大金持ちだ。


 一方、俺の家は貧乏だ。

 派遣ギルド要員だった父さんは、スライム相手に殺されてしまった。母さんは街の武器屋でパートで働いている。

 生活は苦しいが、母さんがパートを掛け持ちして、なんとかギルド・アカデミーに通わせてくれた。

 母さんは俺の冒険者の才能を信じて、俺をヨツビシ・ギルドの正ギルド社員にするために、昼も夜も低賃金の激務に耐えていた。


「君の家は金がないんだろう? どうせ卒業できないのだから、スキルを手に入れられない。スキルがなければ冒険者にもなれない。君はこのアカデミーにいても、時間の無駄だ。アカデミーを辞めて、早く貧乏な母親を助けてやれよ」


 エンリケは笑いながら俺の肩に手を置いた。

 スキルを手に入れるには、ギルド・アカデミーを卒業し、神官からスキルを付与されないといけない。

 それ以外に、スキルを得る方法はなかった。

 勇者や魔術師のスキルを得なければ、この世界ではスライムすら倒せない。


「教科書も買えないんだろ? さっさと辞めてほうが身のためだ。そうだろ? みんな?」


——そうだ! そうだ! お前なんか辞めちまえ!


 クラスメイトが一丸となって、俺に辞めろコールをする。

 俺は辞めたほうがいいのかもな……。

 金持ちの坊ちゃんばかりの学校で、俺は馴染めなかった。


「みんな! ミゲルくんはいつも頑張っていたわ! ミゲルくんを追い出すなんて酷すぎる!」


聖女候補生のグロリアだけが、俺を庇ってくれた。

俺は遊びもせずに勉強していた。奨学金を得るために、今まで寝ずに勉強してきた。

 おかげで、成績は良かった。

 俺なりに頑張ってきたのに……。


「……俺もお前らのことは嫌いだ。そんなに追い出したいなら出て行ってやるよ」


俺は教室から出て行った。


 ——二度と戻ってくんなよ!


 最後まで俺を罵る声が聞こえた。


 ◇◇◇


 やることもない俺は、家に帰った。

 スラム街にある、今にも崩れそうな小屋だ。

 

 ——きゃああああああ!


 外から悲鳴が聞こえた。

 これは……母さんの声!

 俺は外に飛び出した。

 そこで俺が見たのは——

 グリズリーベアーに襲われている母さんだった。

 母さんはグリズリーベアーの爪に身体を引き裂きさかれ、血まみれになっていた。


 ——冒険者を呼んで来なくちゃ!


 誰かが叫んだ。

 

 無駄なことだった。

 ビルドタウンでは、モンスターが出てたら、ギルドから冒険者が来て討伐してくれることになっていた。

 でも、冒険者が守るのはギルドと魔物保険契約を結んでいる金持ちだけだ。

 ビルドタウンでは、金がすべてだ。

 スラムの貧乏人は見殺しにされる。


「ミゲル……」


 何もできずに立ち尽くす俺に、血まみれになった母さんが声をかけた。


「……ごめんね。母さんはここで死ぬわ。家の床下にお前のために特別な物を隠しておいた。きっとお前の役に立つから」


「母さん!」


俺が叫んだ時、グリズリーベアーが母さんの心臓を爪で引き裂いた。

 

「あああああああああ!」


俺はその場でへたり込んでしまった。


「ぎゅるるるるるる……」


グリズリーベアーが俺に向かってきた。こいつはAランクモンスターだ。

 スキルがない俺が、勝てるわけない。

 

 俺も殺される……

 立ち上がって、俺は家の中へ戻った。

 グリズリーベアーが追いかけてきた。

 ドアがガンガン叩いてやがる。

 床下に何かあるって言ってたな……

 俺は床に這いつくばって、何かないか調べる。

 なんだ?この床は動くぞ……。

 床のタイルを外すと、中に大きな穴があった。

 何かデカいものが入っている。俺は引っ張り出した。

 

 剣、鎧、兜、盾。

 装備が一式揃っている。

 なんだこれ?

 真っ黒で、禍々しい雰囲気がする……。

 

 ガシャン!

 グリズリーベアーが入ってきた。

 このままじゃ、殺される……。

 俺は装備を身に纏った。

 なんだこれ?

 力が限りなく湧いてくる!


 グリズリーベアーが俺に近づいてきた。


「ぐあううううううう!」

 

 左に持った盾が勝手に動いた。

 鋭い爪から俺を守ってくれた。

 そして右に持った剣も——勝手に動いた。

 

 俺はグリズリーベアーの両腕を切り落とし、心臓を突いた。


「ぎゃやううううううああああ!」


グリズリーベアーは倒れた。

 剣士のスキルがない俺が、剣でAランクモンスターを倒した。

 いったい何が起きて……?


「おい。あんた」


後ろから女の子の声がした。

 俺は振り返った。


「その装備は私たちのものだ。返して」




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【★あとがき】


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