第17話「見知らぬ、天井」
「ん……?」
ぼんやりと意識を取り戻したとき、そこには見覚えのない白い天井があった。
こ、これは……!
「知らない天井だ……」
とまあ、お約束はこの辺にしといて。
ここ、普通に保健室……だよな。
俺はまだ霧がかった頭を働かせ、自身の記憶を辿る。
確か女莉と昼飯を食べ終えたあとに火災が発生して、その原因となった異能力者の暴走を止めるために
んで今俺が保健室にいるってことは、誰かが俺を保健室に連れてきたって認識でいいんだよな。
一体誰が……と俺が頭を動かそうとしたとき。
「…………んん?」
俺は頭に違和感を感じた。
いや、正確に言うなら頭の下に違和感を感じた。
枕じゃない『何か』が、頭の下に敷かれている。
「なんだこれ……」
随分と柔らかい感触。
温度もそれなりにあるな。
例えるなら人肌くらいの温度。……おや? 人肌?
俺はベットからガバッと起き上がり、頭の下に敷かれていた正体を探る。
「おやおや先輩。ようやくお目覚めですか」
見ると、そこには女莉が座っていた。
どうやら頭の下に敷かれていた正体は女莉の膝枕だったらしい。
「………………」
いやいや。
『女莉の膝枕だったらしい』じゃないんだよ。
「……なんで膝枕してんの」
「起きたとき、先輩が喜ぶと保健室の先生が仰っていたので」
俺が問うと、女莉は平然と答える。
「それで先輩。私の太ももどうでした? 嬉しかったですか?」
「まあ、嬉しくないこともなかったけど」
かなり滑らかな肉感だったし、柔らかったかったし……。
俺は熱くなった頬を頭を
「っていうか今日あったばかりの男に膝枕っておかしいだろうが」
「や、やっぱりそうですよね!?
先生に言われたときおかしいなって思ったんですよ……」
あの先生めー、と小さく呟きながら頬を赤らめる女莉。
どうやら膝枕をした側の女莉も恥ずかしかったようだ。
そんなに恥ずかしかったなら、わざわざ膝枕を続ける必要なかったのに。どうせ今先生は離席中なんだから。
……いや。
多分女莉が膝枕をしてくれたのは、先生に言われたからだけじゃない。俺のことを心配してくれていた気持ちもあったのだろう。
それで保健室の先生が言ってくれた膝枕案を真に受けて、生真面目にやってくれたのか。
「女莉。ありがとう」
俺が感謝の言葉を口に出すと、女莉は驚いたかのように口を開く。そして照れくさそうに、
「な、なんですか急に……。いきなり改まって」
と呟いて、顔を伏せてしまった。
「……………………」
なんか女莉って、素直に感謝されたり褒められたりすることに慣れていない気がするな。
顔も良くて性格も良いのに、なんでだろうな。
「そ、そんなことよりですね!」
女莉はベットから降り、近くにあった椅子に腰掛ける。
「先輩起きたばっかりで困惑してますよね?
なにか聞きたいこととかあるんじゃないですか?」
「ああ――」
急に真面目モードに切り替わった女莉に戸惑いつつ、俺は彼女に訊ねる。
「とりあえず、俺が気絶したあとの流れを教えてくれ」
「わかりました」
女莉は語る。
俺が
その火事による建物の損害は全くなかったこと。妹の奏恋とその友達に怪我や火傷はなかったこと。
その後俺は先生に運ばれ、保健室に連れて行かれたこと。
火災のため授業は午前で終わったこと。
だけど俺と女莉は教師達に残るよう言われたこと。
「残れって多分、火事の事情聴取だよな」
「そうですね。だるいなあ……」
短針は2時を向いている。つまり今は14時か。
「悪い。俺が気絶してたせいで待たせてしまって」
「別に気にしてないですよー。というか、私からも先輩に話があったし」
「話?」
「ほら、異能力についての……」
「ああー」
そういえばそうだった。一番大事なことを忘れるところだった。
「といっても異能力については
「人に聞かれでもしたら、『こいつら厨二病か?』ってなっちゃうもんな」
「それもありますけど、どうせ話すならもっと詳しい人から聞いたほうがいいと思って」
「もっと詳しい人?」
「はい」
頷いたあと、女莉は告げる。
「先輩にも紹介しますよ。
私以外の異能力者――新海極魔暴龍さんとマキナさんを」
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