第15話「正義」
異能力さえ書き換えられるとしたらこの『
だってもしそれが可能だとすれば、好きな異能力を自ら作り出し、自由に操ることができてしまう。
例えば自身の異能を『想像したことが現実になる』という能力に書き換えたとすれば、それはなんでもありの能力。まさにご都合主義だ。
――だからこそ、ぶっ壊れ能力であるがゆえに、『
そりゃそうだ。
俺の『
魔力量的な問題で、
しかし作ることは不可能でも、消すことなら?
『
異能力の作成は不可能でも、異能力の削除くらいなら今の魔力量、MP70の魔力でもいけるかもしれない。
「試してみる価値は、あるんじゃないか……?」
だが、そうなると問題になってくるのは……。
「残りHP量は約半分、か」
女莉と違って無視できないHPの残量。
といっても減ったって
であれば炎をなるべく浴びずに近付きたいところだが、どうするか。
「………………」
俺は暴走した異能力者の動きを観察する。
異能力者――本人自体は誰も傷付けたくないという意志の現れか、この部屋にいる他人を避けたり逃げたりしている動きを見せている。
だが、厄介なのは勝手に発動し操作されている異能力の方。
先の炎の動きを見る感じ『動く物』または『異能力者に近付く者』を無差別に狙っているのか?
そうだとすれば、別の誰かが
チラリ、と、女莉の顔を見る。
その姿は相も変わらず
「……一体俺はなにを考えているんだ」
ただでさえ痛みを必死に我慢している子に、これ以上の
「最低だろ、俺」
そんなこと、言えるはずがない。
そうして、俺は思考を切り替えようとしたが、しかし――
「やりましょう」
女莉はそう言い放つ。
「え?」
「先輩がどんな作戦を考えているのか分かりませんが、多分私に囮になって欲しいんですよね?
それなら
「でも……。いいのか?」
俺の間の抜けた問いに、女莉は強く頷く。
そのときの女莉の顔には強い意志と覚悟があった。
「どうして女莉は……そこまですることができる?」
その
確かに
しかしいくらダメージを受けなくとも、痛みを伴う役割を一切の
ましてや今日会ったばかりの俺のためになんて……。
「そんなの、決まっているじゃないですか」
女莉は迷うことなく、それが当たり前なんだと言わんばかりに、答えを口にする。
「困っている人がいたら助けたい。
その気持ちに会ったばかりの人だとか、見ず知らずの人だとかなんて関係ありません」
言って女莉は、暴走した異能力者の所へと駆け出していく。
「こっちに来ないでください。来ないでくださあああああい!!」
刹那、放たれる炎の
その矛先は俺の考え通り、全て女莉の方向へ。
「――ッ!」
唇を噛み締め、女莉は一つ一つの
炎は女莉をすり抜け地面へ落ちる。やはり女莉にダメージはない。
それでも女莉の身体の中に想像を絶するような激痛が走ったのは紛れもない事実だ。
「女の子ががんばってるのに、男の俺ががんばらないでどうする……!」
女莉の囮を無駄にしないために、俺も暴走した異能力者の所へ走り出す。
が、女莉と違って真っ直ぐ向かっていくわけじゃない。あくまで本命が俺だと悟られないよう、炎の影に隠れながらコソコソ接近していく。そして――、
「あと2m……!」
あともう少しで俺の異能が届く所まで近付く。
ここまで来れば、あと一歩近付いて手を伸ばすだけで
問題があるとすれば、本当に異能力を削除することができるのかどうかだが……。
「ここまで来たんだ、今それを考えても仕方がないだろ!」
俺は炎の影から飛び出し、暴走した異能力者へと手を伸ばす――!
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