前世の姿 ~アリシアとアルフレッドの場合~

@tiana0405

現世を生きる私が今思うこと

 今の状況は、800年前のそれと酷似しているように思われる。そうだ、私たちは、この歯痒い思いを何度も味わってきた。




 しかし、私はもう同じ繰り返しをするのは嫌なのだ。君もそうだろう?結ばれない結末を繰り返すのも、向き合えない末路をたどり続けるのも、忘れたふりをしてだましあいを気取るのも、もうこりごりだ。



 


 私たちは、今までの転生で、随分と自分たちが創り出した人間ドラマにはまってきたように思う。それは、私たちが、自身から目を背けて、他者の価値観に合わせたふりをしてきたからだ。いつだって、大切なのは、富でも名声でもなく、歴史でも、常識でもなかった。最も重要なのは、自分を信じて、愛して、見つめる勇気を持つだけだった。




 私は、もう、この瞬間から、どの前世の私ですら開けられないと思い込んでいたパンドラの箱を開けて、新たな私に生まれ変わっている。


 


 パンドラの箱を開けた先には、何が広がっていると思う?ギリシャ神話や旧約聖書のように、善悪や見たこともない怪物が詰まっているとでも?そのどちらでもないよ。私が目にしたのは、時の彼方まで広がる、«私»という名の宇宙だった。全ての可能性を箱に押し込んで、つぶしていたのは、他でもない私自身だったのだ。だから、私はもう恐れない。

 

 今、この瞬間刹那、私は自身を愛し、楽しみ、喜び、跳ね回る。それこそが、君との関係性の今までのパターンから抜け出す近道だと知っているからだ。



 私は、自身の可能性を際限なく許す。そして、君と共に生きる。そう決めたのだ。私は、君であり、君は、私であるのだから。私は、私を見つめることにした。私が共に生きる伴侶と決めたのは、君だ。その目的地までの道のりのお茶請けに、今日はふと思い出した800年前の記憶を、呼び覚まそうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る