玖:人が狐から取り返した話
さあてこれはごく最近の話で、狐のせいかどうかもよくわからないんですけどね。
この辺一帯では一番のお金持ちの、いえ一番のお金持ちだった家のお嬢様の話です。
これが本当に絵に描いたような深窓の御令嬢でしてねえ。わたしたちのような下々の者にでも礼儀正しくお声をかけてくれる、出来た方でしたよ。
学校の成績も良かったんでございましょう。普通の子が行くような名前ばかりの高等学校なんぞではなく、ちょいと離れた、ええとなんでしたっけ、全寮制のミッション系女学院?なんぞに進学されたとか。はい、ちょいと遠くには、そういう所があるんだそうで。
そりゃあ昔なら嫁入りするような年頃ではありますけどね、まだ子供じゃあありませんか。学のためだか箔のためだか知りませんが、お嬢様一人だけを送り出した親御さんはどんなお気持ちだったのでしょうねえ。
立派になって帰って来るだろうか、良からぬ
帰郷されたお嬢様はお屋敷に閉じ込められ、学校に戻ることはもちろん、ご近所に出歩くことすらできなくされてしまったのです。
なにがあったのかは存じません。ただ夜ごとに親父様が猟銃を持ってうろついてなさったり、お嬢様が窓から顔を出して甲高く
その御一家もお嬢様の治療だか夜逃げだか。ある日忽然と消えてしまわれました。今では荒れ果てた空き家に野の獣が。ええはい、獣が
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます