ソラビト〜SORABITO〜【単話版】

アチャレッド

零の章

零の一

 始まりはいつだって突然だ。と同時に終わりだって誰も予想できない。

ある日突如として現れた異星人達は言った。

「今日から地球は宇宙皆の物とします。」

その日世界は滅んだ。


 見知った空。皮肉にも昔は日本でここまで星は見えなかったそうだ。

地上に人が減り、宇宙の科学力を持った今のこの星は、空に星の浮かぶ綺麗な星になった。

きらびやかに輝いて見える星。

その星々の輝きは地球ほしを変えたというのに。

 スターゲイザー、星を探してる。

「独りぼっちが切ない夜、星を探してる………か。」

 雨霧零は空を眺めて一日を過ごす。

下級人類アンダーである人間は地下で生まれ、地下で暮らし、地下で死ぬ。

わかり易い階級社会になった地球では平等など失われた。

あの日一般人は裏切られたのだ。この星の先住民である同種族に。

 零は崩落した旧東京メトロで住んでいる。

その一角にぽつんと孤立する地下売店。

そこが零の家だ。

「レイ!」

聞き慣れていい加減聞き飽きた声に呼ばれる。

いつものことだ。

「何聴いてるの?」

零はゆっくりと上体を起こし、眼下を見つめる。

「…………スピッツだ。いつも通り。毎日同じコト聞くなよ。マイナ。」

舞菜・・はニコリと笑った。

 毎日笑うこの笑顔が嫌いだった。

他の大人達と違うホントの笑顔。

 零は小さく舌打ちをした。

「スピッツの何の曲?最近私も聴いてるから割とわかるよ!」

零は少しばかりの沈黙を作ったが、舞菜は零の言葉を待った。

「………スターゲイザー。」

「スターゲイザー!それってあれでしょ?遠くー遠くーってやつ。」

「冒頭じゃねーか。」

別段、仲が悪くはない。

昔はもっと仲良くしてた。

だがーーー…………。

「………ねぇ。レイ……。」

神妙な面持ちの舞菜。この顔も見飽きてしまった。

そしてまたいつも通り零の顔は曇る。

「今日はさ。一緒にご飯を……。」

「………行かねー。」

零はゆらりと立ち上がり、冷たい目で舞菜から視線を外した。

「……お婆ちゃんもあの時はびっくりしちゃっただけなんだよ……!謝りたいって言ってるよ?」

零の体がゆっくりと傾く。

「私も謝るから……だから……!」

「…………お前のせいじゃない。それが大人なんだろ。」

零の体は舞菜の向く方とは反対に向かって落ちていった・・・・・・

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