第17話 還る場所

水銀を満たした池のある家に住んでいた、池では小型の魚が泳いでいた。トイレと池は繋がっているらしく、血液や水銀で満たした入れものをもってトイレに行くと、それらは吸われてしまい池が満たされていたように思う。


隙間のある引き戸はときに滑り軽くなることがあり、その時も水銀や血液を流すことで滑りをよくしていた。きっとそれがこの家や建具を扱う最善のことなのだろう。


走ると息切れを起こして倒れ込んでしまい、何日も蹲っていることがあった。体のどこかから金属が失われ、前のめりになったまま水銀の点滴を受けた。命は脈々と続き、今に続いてしまったのだが、ふと気づくと心身は倒れ込んで水銀よ点滴を飲んでいる白の壁の角に押し付けるように据え付けた無機質なベッドに寝ていた。


横断歩道のような記号が見えている。その先には街の明かりや工業地帯があり、その屋根を越えると還るべき星がある。そこに向かうことが決められていたように感じ、歩みを進めている。

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