陳琳の人生幻視創作のメモ

どうせ文章に出来なさそうなので、プロットの前段階くらいだけど上げちゃう

一応「興国の詩人」というタイトルを考えていたけど陳琳べつに詩人が本職じゃないんよな


陳琳プロフィール

徐州出身。155年生まれ(曹操とタメ)

がさつで気分屋。口先や文章など、言葉で人の心を変える才能を持っている。普段はおべっかや人を煽ることに使っているが、やろうと思えば民衆を扇動して反乱を起こすこともできるかも。特に文章が得意。


①175年(21歳)「郷里の秀才」時代

陳一族の外れ者である陳琳は、自分の口先だけで世渡りができる才能を使ってどうにか金儲けが出来ないか日々考えている。仲のいい張昭・臧洪と共に書を読み論戦し川で魚をとっておやつに食べる生活をぼんやり続けている。

本家の家督を継いだ五つほど上の陳珪は既に倅を生み、若輩ながら徐州の他豪族たちと渡り合っている。そんな陳珪は好きなだけ学問に浸ればいいというが、他の一族の者は穀潰しを快く思わない。豪族とはそういうものだ。しかし数年前朝廷の清流派が大量解雇される事件もあり、出世は無理かもとも思っている。

そんな時、張昭が孝廉に挙げられるも辞退する。間違いなく乱世に突入した世の流れを見て、彼は仕えるべきは死にかけの朝廷ではないと感じたらしい。一方臧洪は、一刻も早く身を立て漢王朝に尽くしたいと言う。が、臧洪はまだ成人の儀を終えていない。これは朝廷に乗り込むチャンスだ。

陳琳は自分の才能の生かし方を乱世の渦中に求めることにした。覚悟を決め、陳珪に自分を孝廉に挙げるよう直談判する。


登場人物まとめ

陳珪…後に息子の陳登と共に、劉備の徐州獲りを助ける有力豪族。その腹黒いけしゃあしゃあぶりは若い頃から健在だったのでは。勝手に150年くらい生まれだと思っています。パパキャラなので孔融よりちょい年上くらい。

張昭…後に孫権にめちゃギャイギャイ言う孫呉の名臣。数々の石頭エピソードから若い頃もクソ真面目の強情っ張りだったのではと思っています。156年生まれ。

臧洪…後に対陳琳クソデカ感情製造機になる男。もとい義で広く知られることになる名将。臧家は元々すごい名家とか豪族とかじゃなかったようなので、それもあって175年の時点では登用されなかっただろうと思います。


②184年(30歳)初めての従軍

朝廷に人脈なく官僚となった陳琳は人の嫌がる類の雑用を任され続けてきたが、ある時みんな嫌いな成り上がりの将作大匠・何進の部下に異動となる。嘆きを先輩兼友人の馬元義に愚痴りつつ飲んでは、二人でいつか尚書令くらいまで出世しようと盃をぶつけ合う。

ある日、黄巾の幹部の一人から、洛陽襲撃の計について密告が入る。真っ先に動いたのは誰よりも宮内の地理に明るい宮殿建設の長・将作大匠だ。幹部の口から聞かされた首謀者の名に愕然とするが、陳琳は声を振り絞って首謀者の居場所を何進に進言する。秘密裏に兵は回され、徒党千人と首謀者馬元義は速やかに捕らえられた。

陳琳はこの一件で献策や文書作成など文官の戦い方を、そして乱世を生きるとはどういうことかを学ぶことになる。黄巾は蜂起し、洛陽防衛のため大将軍となった何進は、陳琳を呼び出す。

陳琳は初めてそこで何進と腹を割って話す。何進は成り上がりで、元豪族の長だ。俺たちはいくら人に後ろ指を指されようと乱世に一矢報いようと拳をぶつけ合う。


登場人物まとめ

馬元義…誰も官僚だったなんて言ってないけど、宮中工作をやるには官僚だった方がやりやすかろう。陳琳の初戦を華々しく飾ってもらうために陳琳の友人になっていただきました。どうせ全部幻覚だ。

何進…妹のお陰で出世した成り上がりなので嫌われ者。ひどい扱いを受けがちだけど彼にも彼なりの道理とか正義みたいなものはあったんじゃないかと思います。すぐ死ぬけど。

臧洪…関係ないけど臧洪は180年くらいに官吏になって184年くらいに何進のやり方に反発して下野しています。清廉潔白な臧洪の選ばなかった蛇の道を陳琳は選んだことに。


③189年(35歳)主簿からの転落

何進の主簿(秘書)となった陳琳。主簿の筆頭である孔融から文官の戦い方を叩き込まれながら、日増しに暴走していく何進を止められないことに自分の無力さを感じている。遂に何進は十常侍によって暗殺、刺客の手は主簿である陳琳たちにも伸びる。皮肉にも陳琳は主簿となってからの5年間で各方向にコネができており、そのコネを使って何とか冀州に落ちのびる。何進と誓った通り、俺は乱世に一矢報いたい。死ぬ場所はここではない。

冀州は袁紹の同盟相手・韓馥が治めており、韓馥は面倒ごとを持ち込まれたくないと陳琳を登用しなかった。陳琳は一か八か、主簿時代によく顔を合わせていた袁紹とコンタクトをとり、袁紹の冀州攻略を助ける。袁紹の方も丁度冀州の物資を狙っており、191年に袁紹は冀州を攻略する。こうして陳琳は袁紹に仕えることになった。


登場人物まとめ

孔融…こいつも何進主簿をしていたはず。文官としても文人としても陳琳の先輩。陳琳が曹操に降るまで司空軍謀祭酒は孔融が筆頭だったという幻覚も見ている。

韓馥…気弱なおじさん。袁紹と同盟を組み、廃帝などの作戦を物資面で助けたりしている。

袁紹…言わずもがな。絶対陳琳が主簿してた時代に面識あったでしょ。何進の死は袁紹の扇動によるとも考えられるので、陳琳が袁紹を手引きしたならば、結構な手のひら返し行為にあたるかと思います。


④196年(42歳)臧洪の死

袁紹に仕えてから臧洪と再会し、ひとまず和解(?)する。けれど陳琳は臧洪の生き方を時代遅れだと思っているし、臧洪は陳琳を不義理だ、変わってしまったと思っている。

前年、呂布が兗州を乗っ取った。呂布に加担した張超は曹操と袁紹によって討たれる。臧洪にとって張超は下野した後拾ってくれ、また反董卓連合軍に推挙してくれた恩人。臧洪は袁紹に反旗を翻す。臧洪の才を愛していた袁紹は同郷である陳琳を降伏勧告に遣わす。

この頃の陳琳はどこか乱世に慣れ、感覚が麻痺していた。仕事も淡々とこなすだけだった。

臧洪は陳琳の勧告を突っぱね、返書の最後には陳琳個人へ向けた批判を書き連ねる。そこには「行け孔璋」という一語が。決別の文脈に現われるが、陳琳は「俺にはできない生き方を、やれるもんならやってみろ」と、臧洪が発破をかけてくれたのだと察する。陳琳は臧洪の返書を袁紹に走って届ける。

臧洪はその後袁紹に討たれた。陳琳は改めて乱世への決意を固める。そうして自分の筆で乱世の大局を動かしてやる、終わらせてやるという野望を燃やす。


登場人物まとめ

張超…心優しき豪族。兄の張邈とは大違い。本貫は兗州だが、陳琳・臧洪の出身郡である広陵の太守だった。

臧洪…戦いも統治も見事な名君、人格者として広く中華に名を轟かせていた。ついに死ぬ。陳琳も人間なら何にも思わなかった訳ないんだよな。

袁紹…ほんとに臧洪は死なせたくなかったらしい。戦力的にもでかいし、名声轟く臧洪を殺したとなれば自分の評価も下がるというもの。実際そういうことの積み重ねが官渡に繋がってるんだぞ。反省しろ。


⑤200年(46歳)官渡の戦い

開戦にあたり、陳琳は袁紹に、全軍に檄を飛ばすことを進言する。袁紹は受け入れ、劉備に読ませる檄の起草を陳琳に命じる。この原稿は修正されることなく劉備の手に渡り、劉備が読み上げ、他軍の将や兵たちにも伝わる。

結果、軍の士気は上がり、序盤の戦闘は有利に進んだ。陳琳は筆で乱世が動く手ごたえを初めて明確に実感する。

この檄は、曹操側で従軍していた孔融を経由し、頭痛に悩む曹操の手に渡った。曹操は自分をくそみそに貶す内容ながら韻律も美しく心を揺さぶる名文に驚く。今まで陳琳とは何進がいた時や袁紹と同盟関係だった時などに顔を合わせたことはあった。けれど文章を見たのは初めてだった。気付けば頭痛も治っている。

曹操は孔融から陳琳の評価を聞く。孔融は、今はまだ在野のいち文官だが、持つ力は確かな脅威だと話す。

曹操は言葉が持つ、人心を動かす力を改めて痛感する。それは自分自身も重く受け止めていた所だからだ。曹操は陳琳という人物を自分の元に引き入れようと決意する。


登場人物まとめ

袁紹…演義ではあらゆる反感を買いまくり、関羽の噛ませ犬として忠臣を一瞬で喪いどうしようもなくなる。しかも後継者問題をぼやっとさせたまま死ぬ。憎めない面があることが分かっていても、もうちょっとどうにかできなかったのか。

孔融…全部幻覚。ただし孔融は青州時代に臧洪と政敵の関係にあり、よく知っている。陳琳の心境に察せられる所がある。

曹操…人材オタク。本当にキショい。阮瑀も山を燃やして手に入れた的な逸話(真偽は不明だけど)がある。でも文学の価値を政治の道具から独立した芸術へ押し上げてくれた立役者でもある。こいつがいなければ陳琳もいない。ありがとう曹操。


⑥205年(51歳)曹操への降伏

袁紹の死後袁熙につくが、この年袁熙は死亡、陳琳は曹操に捕らえられる。曹操は陳琳が書いた檄文について「私のことはいい。だが何故私のみならず、私の父や祖父まで貶めねばならなかったのか」と問う。陳琳はまだ死ぬわけにはいかない、と陳謝しようとする。けれど臧洪のことが頭によぎる。ただ生きて機を待つのではなく、一か八か覚悟を決めなければ、あいつは行けと言ったんだ。

陳琳は丁寧に陳謝した後、曹操の目を捉えて「引き絞った鏑矢は射るほか無かったのです」と付け加えた。仕方なくやったのだという言い訳と取ることもできる。しかし真意としては、鏑矢はもう射たのだ、俺はこの矢で乱世を裂くのだという決意表明だ。

曹操は陳琳の決意表明を見抜く。そうして陳琳を許し、自身の軍謀祭酒(従軍記者団)の筆頭に抜擢する。


登場人物まとめ

曹操…よく考えたら陳琳と曹操には浅からぬ因縁があります。何進の死にも臧洪の死にも間接的に曹操は関わっているし、曹操は陳琳の生まれ故郷である徐州で大虐殺をやらかしています。陳琳の同族だって多く死んだはず。それでも袁紹のもとにあった陳琳は、一族たちから絶縁されている可能性もあるかも。当時の絶縁って普通に天涯孤独になることよりも重い意味があったのでは。


⑦208年(54歳)赤壁

曹操が丞相になった。自分たちのパトロンの地位が安定したことで文人たちはひとときの安寧を得る。陳琳と相棒の阮瑀は軍謀祭酒から記室(軍に限らず書類全般の起草頭)となる。

しかし劉備と孫権に密盟との報せがあり、曹操は腕の立つ文人を選んで引き連れ赤壁へ出征しようとする。孔融はこれに反対したが、ついに曹操によって処刑されてしまう。

陳琳は司空軍謀祭酒の頃からの相棒である阮瑀と共に従軍する。結果は曹操軍の大敗。曹操の脱出に少し遅れて続くように、従軍記者団も一路北へ走る。

華容道へ差し掛かったとき、行く道の先で曹操が関羽と対峙しているさまを、そうして曹操が関羽に頭を下げている所を目撃する。陳琳にとっては八年前、同僚だった顔良、文醜を一太刀で殺してしまった男だ。関羽という豪傑の恐ろしさに、筆の力など無力ではないかとさえ思ってしまう。記者団は曹操の一団に追いついた。陳琳は関羽の横を通り過ぎる時、顔を歪める関羽から目を離せなかった。

しかし阮瑀は敗走の道のりの中で、景観を朗々と歌う。阮瑀は歌が上手い。阮瑀の歌声に、曹操と部下たち、そして陳琳の目は次第に上へ。そして次はどうしてやろうかという話にまでなった。

曹操は陳琳と阮瑀に、孫権と劉備が再び手を組むことを阻む書簡を起草せよと命じる。陳琳は劉備に、阮瑀は孫権に宛てた書簡の草案を馬上で書き上げる。曹操は二人の草案を読み、手の加えようが無いと満足そうにうなる。

陳琳は、やはり言葉には人心を動かす力がある、乱世を終わらせることができると思い直す。阮瑀と目を合わせ、拳を合わせる。


登場人物まとめ

阮瑀…こちらもエピソードつよつよおじさん。曹洪が都護になった時に召し出されたという記述があったので、陳琳より少し早く204年に曹操のもとに来たイメージです。馬上で起草は阮瑀の名人芸エピソード。司空軍謀祭酒時代からやっていたはず。陳琳がそれを見て憧れて、人知れず練習していたりしたら面白いなと思います。適当に165年生まれだと思っています。臧洪より年下。208年の時点で44歳。


⑧211年(57歳)曹丕の五官中郎将就任

陳琳は従軍記者として、また内政に飛び回る文官として忙しい日々を送っていた。そして曹操の基盤を確固たるものにしていった。そしてついに曹操の息子である曹丕が五官中郎将に就任する。

祝いだと曹丕は宴を開く。そして文人たちと詩を作って遊ぶ。盛り上がり賑やかになってきた所で、曹丕は陳琳を外に連れ出した。

曹丕はこれまでも陳琳とよく話していた。陳琳が元袁紹軍の者であることも大きいが(甄氏の機嫌の取り方など相談に乗ってもらっていたりもした)、一番は陳琳を当代きっての文章家と目していたからだ。

「陳先生を信用して言うが、俺はあんたがよく分からないんだ」

「へえ、どんな風に」

「あんたの文は名文だ。疑いようがない。けど俺からしたら、あの文は乱暴だ。なのにどうして父の頭痛を治められる?」

陳琳は若武者のまっすぐな瞳に小さく笑って杯を捧げる。

「それは、貴方様が棟梁になれば分かりますよ」

曹丕の就任に合わせ、文官たちにも人事異動の令が下る。陳琳と阮瑀は記室の任を解かれ、黙っていても俸禄が貰える名誉職へ就く。これからは内政から離れ、従軍と、それから文学の興隆せよとのお達しだ。これからは余生だ、飲み放題書き放題だと笑う陳琳と阮瑀。しかしその冬、阮瑀は病に倒れる。


⑨213年(58歳)寡婦の賦

阮瑀の葬儀が終わり日常が戻りつつある。これまでに劉楨が甄氏に対して平伏しない不敬事件を起こしていた。劉楨は曹操の怒りを買うが、今にも処刑しようとする曹操を、当時劉楨の上司だった曹丕が止める。現在劉楨は曹操の命で石工に身をやつしていた。

劉楨は若いながら陳琳と同類で口から生まれたようにべらべらと喋る奴だった。それが今は一言も発さずに黙々と石を削っている。それでも陳琳はごくたまに劉楨を訪ねている。まだ四十も手前ほどの彼が人知れず抱いている覚悟には覚えがあった。

「……孔融さんに誓ったんだ」

ぼそり、劉楨は零す。陳琳が文章なら、劉楨は当代きっての大詩人だった。指にはいつだって墨が馴染んでいた。今は一句も詩を書かず、その手はがさがさに荒れてまめができている。劉楨は詩人であり、王族劉氏の末裔だ。

「機を、見極めろ」

陳琳はぽんと劉楨の肩に手を置いて、そうして劉楨のもとを発つ。劉楨は何も言わなかった。

陳琳はそのまま阮瑀の家を訪ねる。まだ幼い息子二人と遊んでやるためだ。陳琳は、自分がこの二人の先生になろうと決めていた。兄は阮瑀の奥さんに似て真面目、弟は阮瑀に似てどこか浮世離れしている。

陳琳は、筆で乱世を終わらせるという野望が己一代で終わるものではないことに気付いていた。もしこの二人や、俺たちの後を継ぐ者たちが、俺たちの志を継いでくれるのならば、そんなに嬉しい事はねえや。心の内でそう呟いて笑う。

都には春が訪れている。どれだけ先が見えなくたって季節は巡る。陳琳は二人の教え子に手を引かれながら、家の戸を潜った。


登場人物まとめ

劉楨…王族の末裔。のちに曹植と並び称されるほどの天才詩人。自由人だが、芯も強い。曹丕・曹植兄弟とは友達。特に罪を許されて石工から官吏に復帰した後は曹植直属の部下として、文学の師友として親しくした。勝手に175年生まれだと思ってる。39歳。陳琳で言ったら臧洪が死んだくらい。みなそれくらいに何かあるんか。

阮瑀の子供…兄は阮熙といい、後に文官として出世し一族を支える。弟は竹林七賢の一人である阮籍。

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