第15話 ふぃ〜

「ふう」

3人で入ってもまだまだ余裕、な風呂。


柱に沿うような半円の形。タイル張りの作りは大人数で入れるように作られていた。貴族がなんでまたこういった作りにしたか?デカい風呂好きだったか、はたまた複数人と入りたかったのか?


そうした思考は、深く考えないようにした。


セリは湯の、中の尻尾が気になる事はなかった。普段よくカナンの獣耳を見ているが、尻尾は自重している。


『人族的には、お尻をジッと見ているくらい失礼な事!』と聞かされれば、セリだって理解した。


それでも子供のうちは家族間で戯れ合ったりするのだが、恋人との絡みなど一般的にはナシの方で教えていた。


そんな状況を知っているロードは、しばらく濁り湯にする事を決める。セリの関心を引くのは俺だけが良い。とても自己中心的だが、実に番<ツガイ>持ちの獣人らしい思考だった。


湯の効果を読み上げるカナンに、セリが聞く。

「ニオイは、大丈夫?」


獣人の鼻はとても良い。人族が大丈夫でも獣人にはキツい物は数ある。


「大丈夫だよー、これシュルトが獣人向けのを選んだんだなー。」


ふわりと香る程度だ。鼻にクる物は避けて選んでいる。セリにも好ましい、香りだった。


「色んなのを使ってみような?」

「うん!」


良い返事のセリだが、これからもロードと入浴する事が決定している。

(オレも一緒に入る、だな。)


カナンの参加も決定事項だった。たまにシュルトに代わって貰えば良いか、広い風呂は嫌いじゃない。


「よし。上がってアイスだ!」

「アイス!」


セリを拭き、楽な格好に着替える。シンプル過ぎる服だか、どんなのが好みかまだわからない。



キッチンに移動すると、シンプルなミルクアイスを魔法鞄から取り出した。さりげなく出したが、時間停止機能付きのバッグは見掛けによらず高級品だ。


それに言及がある訳なく、グラスに盛られたアイスにスプーンが添えられて出された。ロードがセリに、アーンする。


「ん〜!」


ホカホカになったセリが冷たいミルクアイスをひと口、食べる。とても良い顔になった。


(餌付け)


カナンは思った言葉を飲み込んだ。獣人同士でのソレは愛情表現で、まあ人族の恋人でもやるらしいが?


もっとイチャつく行為より、独占欲の大きい行為だ。カナンは気づかないフリをした。


オレに黙れと渡されたアイスを口にする。

「あ、旨いわ。」


新鮮なミルクとロードの高魔力で作られたアイスは、貴族に出せるくらい上品な味に仕上がっていた。


多分、キースにも出される。舌の肥えている彼にも気に入ってもらえるだろう。

実際は、シュルトが熱い紅茶を出すまで手はつけられなかった。

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