第27話 清side玲への気持ち
俺が女の子に興味が湧かないと感じたのは、中学のいつからだったかな。俺は腕の中でくったりと眠ってしまった、玲の寝顔を見つめながら思いを馳せた。
友達が勧めるエロ動画を観ても、どこが良いのか分からなくて、返って気持ち悪い気がした。一方で相手役の男の裸に目がいくのを、俺はある意味絶望感を持って自覚したんだ。俺は自分の性的な趣向は同性なんだって。
あの女、小沢が俺に接近してきたのはそんな時だった。小沢は自分は女が好きだけど、男が告って来てウザイから、俺と形だけ付き合っているフリをしようと持ちかけてきた。
小沢は、気の強そうな顔をニヤリと歪めて、勝ち誇った様に言った。
「平野って、私みたいに同性愛者でしょ。そう言うのって、何となく分かるんだよね。同じ匂いがするって言うか。別にカミングアウトする必要ないけど、協力してくれたら助かる。時々みんなが見てる前で一緒に話してくれれば良いから。」
小沢の提案に乗ったのは案外悪く無かった。俺自身は小沢の言葉を肯定も否定もしなかった。けれど、堂々と自分の趣向を言えるのは、真似できないと思ったし、小沢は見かけよりもずっとサバサバしていて付き合いやすかった。
まぁ二人で話している内容が、ほとんど小沢の彼女の惚気だったのは、正直辟易としたけれども。そう言えば一度、小沢があの勝ち誇った眼差しで俺に言った。
「平野は、好きな人いるんじゃ無い?何となくだけど。私あの子じゃ無いかなって思ってる相手が居るんだ。ちょっと意外だな。いや、平野だからあの彼なのかな。…え?なにその顔。自分で気づいてないの?ふふ、ウケる。じゃあ教えない。これは自分で気づかないとね?」
結局俺の好きな人?を、小沢は俺に教えてくれる事なく卒業して行った。高校に入学して、俺は玲と同じ高校だったことに妙な安堵感を覚えた。もしかしたら玲が、小6の頃に言ったあの約束を覚えていて果してくれたのかと思ったし、俺たちはまた幼馴染に戻れる。そう思った。
一方で、おれは高校生になったら、男と付き合うこともありなんじゃ無いかと思い始めた。だからと言って、具体的に相手を見つける努力をする勇気は無かった。それに、俺の視線の先にはいつも玲が映り込んでいた。
俺の大事な幼馴染。すっかり疎遠になっている相手。でも一体いつ、この遠ざかった距離を縮められるんだ?玲が俺を見ようとしないのに。
でもある時、俺はガラスドアに映り込んだ玲が、俺を見ているのに気がついた。ハッとして振り返ると、玲はそっぽを向いていた。もしかして玲は俺を見てる?注意していると、何度か同じ様な事があった。俺は大事な幼馴染を取り戻せる希望が芽生えて、もうそればかり気になっていた。
そして高校三年、俺と玲はようやくクラスメイトになった。同じクラスで玲の事を観察していて分かったのだけど、玲は案外友達とじゃれ合う。箕輪とは特に仲が良くて、いつも玲の側にいるタイプとは少し違っていた。
俺はそんな二人が抱きついたり、くすぐってふざけているのを目の当たりにして、ジクジクと何かが燃えては沈んでいくのを感じた。まさか、玲も男が好きで箕輪と付き合っているのかもしれないと、男子校の少なくない噂を思い出して青くなった。
直ぐに箕輪には彼女がいると調べがついて、俺は安心したのは少し前だった。そして今、俺の腕の中で眠っている玲が居る。こんなに激しい展開は流石の俺も予想していなかった。ああ、このまま時が止まればいいのに。
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