第26話 幼馴染ってこれが正解?
僕はキヨくんに抱き締められていた。…あの、これどうしたら良いの?僕はこのまま抱き締められているのも変な気がして、モゾモゾと動いた。キヨくんは腕を緩めたけれど、僕を離してくれなかった。
「…キヨくん、あの、もう離して?」
キヨくんを見上げて言った言葉はなぜかスルーされて、キヨくんは僕をじっと見下ろしていた。もう一度なぜかぎゅっと抱き締められて、僕の耳元でキヨくんが低い声で囁いた。
「玲が俺から離れた罰。…それにこんな事、昔はよくしてただろ?」
僕は昔のキヨくんを思い出した。確かに小さい頃からそれこそ小学校5年生ぐらいまで、こんな事はあった気がする。二人きりで部屋で遊んだり、アニメを見ている時は、いつもキヨくんは僕にくっついて離れなかった。
ああ、相当寂しかったのかもしれない。僕は物凄くキヨくんに申し訳ない気持ちになって、背中に手を回して抱きついて言った。
「ごめんね、キヨくん。寂しかったの?」
するとキヨくんはクスクス耳元で笑った。
「ああ、すごい寂しかった。俺から離れたのは玲だから、俺が満足するまで抱きしめていても良い?」
キヨくんは昔から、こんな風に駄々をこねる事があったのを不意に思い出した。僕が嫌がると余計離れないから、僕の方からぎゅって抱きついてたっけ。何だか幼馴染ってくっつき虫みたいだ。
僕は小さく返事をするとキヨくんの腕の中で、ボディソープの匂いなのか、キヨくんの匂いなのか、柑橘系の良い香りに包まれてすっかり身を預けた。
部屋の扉の音で目を覚ました僕は、キヨくんのベッドに横になっていた。キヨくんが部屋に入ってきたみたいで、僕を呆れた様に見下ろして言った。
「相変わらずどこでも眠るんだな、玲は。文化祭の片付けで疲れてたんだろ。」
僕は目をパチパチと瞬いて、ハッとするとガバリと起き上がった。ああ、僕キヨくんに抱っこされたまま眠っちゃったんだ。はぁ。小さな子供じゃないんだから。
僕はベッドから降りようと身動きして、ふと不味い事に気がついた。ぐっすり眠ったせいか、あ、あそこが勃ってる…。いくら男同士でもこれがバレたら恥ずかしい!
ベッドから降りたら絶対バレちゃう。ああ、どうしよう…!起き上がったのにベッドから降りようとしない僕を、キヨくんは心配そうな顔で見下ろした。
「どうした?何処か具合悪いのか?」
そう言ってキヨくんの眼差しが僕の顔から、上半身、そしてタオルケットの上へと滑って行って止まった。もう僕は両手で顔を覆って呻いていた。ああ、バレちゃった!死にたい!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます