第21話 達成感
「みんな、お疲れ様でした。まだはっきりは分かりませんが、この文化祭始まって以来の売り上げになったんじゃないかと思います。これもひとえに一人一人の頑張りです。特に三浦は良くやってくれました。はい、みんな拍手!
えー、明日は片付けが有りますので絶対来てください。また、打ち上げについてはさっき問い合わせて、来週の土曜日11時より、進化系スーパー銭湯の貸切ブースとバーベキューを押さえました。」
キヨくんの労いの言葉に、みんなの歓声が上がって僕も隣に居た箕輪君とハイタッチした。こんなに充実感を感じたのは初めてだった。ずっと帰宅部だった僕は、何かこれといって成し遂げた経験もなくて、唯一この松陰高校への合格がそれに近いものだった。
でもあの時よりも胸が熱くて、きっとそれは一人だけじゃなくて、皆で協力したからこそなんだと思った。皆がわいわいと盛り上がってる中、実行委員の掛け声が掛かった。
「18時に門が閉まるのでそれまでに急いで片付けや、コスプレの着替えを済ませてー。脱いだコスプレ衣装はこちらに種類分けして入れてくださーい。」
僕たちは慌てて其々のやる事に動き出した。メイクをしてもらう訳ではないので、教室の端で脱いだ衣装を箱に放り込みながら、僕たちは制服に着替えていた。
「橘のその姿も、もう見納めか。お前カツラ取っても結構可愛いよなぁ。」
そう、メイドのメンバーに揶揄われて、僕は口を尖らせて言った。
「それはメイクマジックってやつでしょ。でも最初どうなる事かと思ったけど、クラスの役に立てて良かった。」
そうにっこり笑うと、まったくあざとい奴だとか、よく分からない事を言われてどっと笑われてしまった。三浦君が僕の後ろに来て、背中のファスナーを下ろしてくれると、僕はありがとうと言ってメイドドレスを脱いだ。
皆もパンツ一丁でワイワイしていたのに、何故かチラチラ見られている気がして僕は慌ててシャツを羽織った。すると三浦君が腕を組んで僕をしみじみ眺めて言った。
「何かさ、橘がそういう格好すると彼氏のシャツ羽織ったみたいにしか見えないのは何でかな。そのニーハイソックスのせいかな。」
そう言う三浦君も上半身裸でニーハイ姿だったけれど、確かに倒錯的な感じというより何かの競技の人の様だった。僕は皆から背を向けて近くの椅子に座ると、慌ててニーハイソックスを脱いだ。これ以上揶揄われるのは恥ずかしすぎる。
ふと視線を上げると、裏方の片付け班が僕の方をなぜかじっと見ていて、僕が顔を上げると急に目を逸らして動き出した。教室の反対側でキヨくんがすっかり制服に着替えていたけれど、やっぱり僕を眉を顰めて見ていたから、僕はまた何かやらかしたのかと気が重くなったのは確かだった。
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