第12話 文化祭2日目
昨日よりメイド服に慣れた気がする今日は、周囲の視線もそんなに気にならない…。と思ったのに、何だかすごく見られてる気がする。一緒に教室へ向かっていたマッチョ真田君の筋肉胸が隆起しているせいだろうか。僕も思わず見ちゃうしね。分かる。
教室は昨日より遥かに準備万端で、さすが2日目と言うところなのだろうか。キヨくんが昨日の様に教室の真ん中に進み出て、皆の顔を見回すと言った。
「一日お店をやって皆慣れたと思うから、今日は昨日以上に張り切って儲けてください。予想より儲かりそうなので、打ち上げは今話題の進化系スーパー銭湯を考えてます。多分休憩室の貸切ブースがいけると思うので、そこで打ち上げ出来る様に頑張りましょう。」
キヨくんの言葉に皆が色めきたった。僕は皆が喜ぶ理由が分からなくて周囲をキョロキョロ見回した。すると隣に居た真田君が僕に、今とっても人気があるんだと教えてくれた。僕たちが騒ついていると、三浦君が手を上げてキヨくんに話しかけた。
「ハイハイ!あのさ、今日の午後女装コンテストあるだろ?俺が出る予定なんだけど、昨日主催者に聞いたら二人まで一緒に出ても良いんだって。だから、橘と参加しようと思って。な?橘良いだろ?」
するとまた皆がわっと盛り上がった。え?コンテスト?僕が?無理!僕は頭が真っ白になって呆然としていたら、三浦君が重ねて言った。
「コンテストの3位までに入ると結構な賞金出るんだ。それを打ち上げに使えば併設のバーベキューも使えるんじゃない?」
三浦君の発言にますます盛り上がって、みんなすっかりバーベキュー気分になってしまった。今更嫌だなんて言える空気では無かった。僕は真田君に頑張ろうぜって肩を組まれて、もう水を差す様な事は言えなかった。
するとキヨくんが皆を鎮めて僕に尋ねた。
「三浦はああ言ってるけど、橘は大丈夫か?」
僕はキヨくんに少し心配そうな眼差しを送られて、反対に何故か反発心が出て思わず頷いて言った。
「僕が役に立てるなら、みんなのために頑張りたいです。」
そう言った僕の言葉に、皆が一段と盛り上がった。結局僕は自分から女装コンテストに参加すると宣言してしまった。三浦君が一緒だから大丈夫だよね…?
そんな僕に三浦君が一緒に自撮りしようと近づいてきて、皆が見てる前で頬をつけながら宣伝用の写真を撮る羽目になってしまった。ああ、早まったかもしれない。羞恥心が煽られて顔が熱くなって両手で頬を押さえていると、三浦君が何枚かまだ撮っていて、ニヤリと笑うと僕に自信満々に言った。
「やば。俺たち優勝するかもしんない。」
そう言って高らかに笑ったんだ。僕は何故三浦君がそんなに自信があるのか分からなかったけれど、今更辞退なんて出来るはずもなく曖昧に笑うことしかできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます