9.ふるさと

 故郷がある人がうらやましい。

 年を取るともうないのかもしれない。

 地名はあったとしても、もう自分の居場所ではないのかもしれない。

 親の居場所であるだけで

 兄弟の居場所であるだけで。

 姉妹の居場所であるだけで。

 戸籍上はそこに間借りしているだけの存在になり果てる。

 意見は言ってはならないし、姿を見られてもいけない。

 私は幽霊のような存在になっている。


 これからは自分で道を切り開いていかないといけない。

 故郷は懐かしいといい思い出ばかりではない。

 新たな責任も発生してくる。

 学生時代よりも重苦しいものが。

 重税にあえぎ、親の介護にあえぐ。


 血縁者で話が付けばいいが、つかないことの方が多いだろう。

 もっと日本の人口が多かったのならば、少なからず問題は解決するのかもしれないのに。

 こんな時代に生まれているのが悲しい。

 こんなに福祉制度が充実しているのに悲しい事件は絶えないことが悲しい。

 この制度がなくなる日も近いかもしれない。

 日本人らしく生きるためにすべきことは何なのか

 自問自答しながら生きていきたい。

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