2種目 ニホンミツバチ

 うちの近所にあるいくつかの公園の花壇でよく見かける花の一つに、ローズマリーがある。

 紫色の小さな花で、花の時期はかなり長く、冬にも咲いている。

 訪花性、つまり花を訪れて蜜や花粉を食べたり巣に持ち帰ったりする虫たちにとって、花の少ない冬の間の重要な餌場だ。


 ミツバチは真冬でも温かい日には活動しているが、啓蟄を過ぎて急に暖かくなると、ローズマリーに集まる働き蜂も増えてきた。


 さて、ミツバチには在来種のニホンミツバチと、外来種のセイヨウミツバチの2種がいる。さすがに街中で養蜂はやっていないと思われるため、近所の公園にいるのはニホンミツバチの可能性が高い。


 だがこの2種は、見分けが難しい。

 ニホンの方は腹部が黒っぽく、セイヨウは腹部の前半のオレンジ色が目立つ傾向があるが、確実ではない。

 実際には、一目で確実に見分けられるポイントがあるのだが、蜂の扱いに慣れていない人にはお勧めしかねる。


 それは、後翅こうしの脈の形だ。

 昆虫のはねの脈は、デタラメに走っているわけではない。種、あるいは科、属ごとにある程度決まっている。

 後翅の端のある脈が、先端部で一本にまとまってY型になっているのがセイヨウ、二本に分かれてH型になっているのがニホンだ。

 筆者はこれを、seiYouセイヨウのY、niHonニホンのHと覚えていた。

 だが、ある博物館の学芸員の先生は脈が2本にほんだからニホンミツバチと言っていた。確かに、そちらの方がわかりやすい。


   ◆


 採集して確認すると、都市公園にいたのはやはりニホンミツバチであった。彼女たちは蜜と花粉を集めると、どこへともなく飛んでゆく。

 公園からの帰り道、都会の町並みを見渡しながら筆者は思う。


 あのミツバチたちは一体、どこで巣を作っているんだろう。

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