4種目 モンシロチョウ

 1年を24分割した二十四節気を、それぞれまた3つずつ合計72に分割する。これが七十二候であり、それぞれ季節を表す短文のような名が与えられている。

 現在、3月中旬の後半は『菜虫化蝶なむしちょうとなる』と呼ばれる。

 菜の花をはじめとするアブラナ科植物を食草とする昆虫はいくつかいるが、蝶といわれるとやはりモンシロチョウであろう。

 菜虫と蝶の間にさなぎがあるとか、モンシロチョウは蛹越冬であるとか、野暮なことは言うまい。


 そろそろモンシロチョウが飛び始める季節だ。


https://kakuyomu.jp/users/r_hirose/news/16817330664229655142


    ◆


 作業場の近くにある公園の花壇には、菜の花が植えられている。遠目で見ると花の周りには何もいないように見えるが、近づくと5mmに満たない小さなハチ達が飛び回っているのがわかる。

 これはコハナバチとかヒメハナバチとか呼ばれるハチの仲間であるが、正確な種名を調べるのに時間がかかる上に知名度も低いので、紹介はまた日を改めるとしよう。


 菜の花には来ていなかったが、少し離れたとこでは3匹の白い蝶が飛んでいた。


 モンシロチョウ、と遠目で決めつけるのは早計である。

 近縁種に、スジグロシロチョウと呼ばれるはねの脈に沿って黒く細い線が入っている種がいる。他に本州にはヤマトスジグロシロチョウと呼ばれる種がいるが、数が少ないので今回では割愛する。


 近縁種でよく似ていても習性は異なり、モンシロチョウは明るく開けた草原を好むため、キャベツをはじめとしてダイコン、カブなどの害虫となっている。一方スジグロシロチョウは森林内やその周辺などの日陰に生えるイヌガラシやタネツケバナなどアブラナ科の野生種を主な食草とする。


 子供の頃によく見ていた本によると、都市部では日陰が多いためスジグロシロチョウが増えているという話が書いてあった記憶があるのだが、現在街中の公園でみられるのは、ほとんどモンシロチョウばかりだ。

 このように、数十年の間に状況が変わってしまうこともある。


 今日は網は持っていなかったし、人もいるので、どこかに止まるのを待って、モンシロチョウであることは確認した。


 これは自分が確かめなければ気が済まないというような性質のものではない。いやまったくそんな気持ちがないとも言わないが。

 後世にデータを残すためには、正確な情報が必要なのである。

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